表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/61

死んだと思ったら奇跡が起きました

轟音が消えた。土煙がゆっくりと晴れていく。


そこに立っていた魔獣は――もういなかった。


砕けた大地。抉れた地面。そして、その中心に、静かに立つ巨神。


やがて、その巨体が崩れた。音もなく、砂へと還る。


残ったのは――一人の少女だった。


ノエルは立っている。だが、その膝がわずかに揺れる。


「……はぁ……」


息が浅い。視界が滲む。足元が遠い。


(……終わった……?)


わからない。ただ――もう、限界だった。


――崩れる。


その瞬間。


「ノエル!!」


駆け寄る影。ルークだった。


腕の中に受け止める。軽い。あまりにも。


「……ノエル?」


呼びかける。返事はない。


「……ノエル?」


肩を揺らす。だが――反応はなかった。


ルークの指が震える。そっと首元へ触れる。脈を探す。


「…………」


ない。


息が――止まっている。


「……なんで……」


声が壊れる。理解が追いつかない。


目の前にいるのに。さっきまで戦っていたのに。


「……なんでだよ……」


抱きしめる。血が服に滲む。


「どうして……」


肩が震える。


「どうして、いつも……」


「一人で行くんだよ……!」


叫びだった。


「僕を……置いていくんだよ……!」


涙が零れる。ぽたり、とノエルの頬に落ちた。


「……ずっと一緒って……言っただろ……」


約束だった。守りたかった、約束。


「……起きてよ……」


声が震える。


「起きてよ……ノエル……」


そのとき。


――ふわり、と。


光が灯った。


ルークの手の中で、かすかな光。


だが――次の瞬間、眩いほどの金色が溢れ出した。


「……っ!?」


騎士が息を呑む。


「な……」


光は広がる。暖かく、優しく。それでいて――絶対的な力。


「……光の、魔法……?」


誰かが呟く。ありえない、と。王と聖女のもののはずの力。


それが今、一人の少年から溢れている。


ルークは気づいていない。ただ必死にノエルを抱きしめている。


「……戻ってきてよ……」


祈る。ただ祈る。


「お願いだから……」


光がさらに強くなる。ノエルの体を包み込む。


血が止まる。裂けた傷が閉じていく。


そして――


「……ルーク……」


かすかな声。


ルークの体が固まった。


「……え……?」


見下ろす。


ノエルの瞳が、わずかに開いていた。


「……じゃがいも……」


微かに笑う。


「……守れた……?」


次の瞬間、ルークの顔が歪んだ。


「……っ、あぁ……!!」


涙が溢れる。


「守った……!守ったよ……!!」


声が崩れる。


「だから……だからもう……」


抱きしめる力が強くなる。


「……一人で行くなよ……」


騎士たちは動けなかった。戦いよりも、この光景の方が――理解できなかった。


レオニードが静かに呟く。


「……もう一人の、“奇跡”か……」


その視線は、二人から離れなかった。


夜が明ける。光が二人を包む。


それは――戦いの終わりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ