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初めての戦いで、守りました

初めての、戦いだった。


ノエルは地面に手をかざす。「――っ、動いて……!」淡い緑の光が土に沈む。次の瞬間――大地が裂けた。


ゴゴ、と低い音を立てて地面が波打つ。足元を崩された魔獣がバランスを崩し、そのまま亀裂に飲み込まれた。


「……っ、やった……!」


一匹。二匹。確かに倒した。


だが、空気が変わる。


残った魔獣が地を蹴った。跳んだ。


「……え」


常識を無視した跳躍。空を裂く影がノエルへと迫る。反応が遅れた。


――ドンッ!!


衝撃。体が吹き飛ばされる。地面を転がる。肺から空気が抜けた。


「……っ、ぐ……」


口の中に鉄の味。血が流れる。


視界が揺れる。


怖い。


怖い怖い怖い怖い。


(無理……)


心が壊れそうになる。


(あんなの……)


誰かが。大人が。強い人たちが。全部、潰してくれればいいのに。


「ノエル様!!逃げてください!!」


遠くで誰かの叫び声。逃げろ、と。


その言葉に、一瞬だけ足が動きそうになる。


(……逃げても、いい)


その方が、きっと正しい。


でも。


ノエルは顔を上げた。


倒れている人たち。血を流しながら、それでも立ち続けている人たち。


(……この人たち)


脳裏に浮かぶ。あの日、差し出されたじゃがいも。


「……持ってけ」


その手。その声。


(ここで逃げたら)


「……おじさんたち、食べられちゃうでしょ……」


声が震える。それでも続ける。


「そしたら……」


息を吸う。


「……じゃがいも、食べられないじゃない」


その瞬間、遠くから響く音。


――ドドドドドッ


馬の足音。


(……来た)


ノエルは、ふっと笑う。血で汚れた口元だけが、わずかに歪む。


「……遅いのよ」


もう限界だった。体は痛い。意識も薄れている。


それでも、目の前にはまだ魔獣がいる。逃げる理由は、もうなかった。


「……私は」


ゆっくりと立ち上がる。膝が震えている。それでも、立つ。


「……絶対に、逃げない」


魔獣が再び襲いかかる。


その瞬間。


ノエルは、大地へと手を叩きつけた。


「――来なさい」


世界が揺れた。


地鳴り。空気が震える。土が盛り上がり、岩が軋む。


大地そのものが応えるように――形を成す。


巨大な腕。重厚な体躯。


土と岩で編まれた、“巨人”。


ゴーレム。


その巨体が、ゆっくりと立ち上がる。


魔獣が怯んだ。


次の瞬間――ゴーレムの拳が振り下ろされる。


地面が砕ける音。魔獣が潰される。


その光景を、到着した騎士団は呆然と見ていた。


「……なんだ、あれは……」


視線の先。血にまみれた少女が一人、立っている。その背後には村人たち。


少女は――一歩も、退いていなかった。


「守りなさい」


静かな声。


ゴーレムが再び動く。


その姿は――まるで、大地そのものが彼女に応えているかのようだった。


恐怖は、消えていない。


それでも。


ノエルは、前を向いていた。


――守ると決めたから。


それだけで、十分だった。

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