表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盲目の剣豪篇、連載中 / 落貌ノ鬼『劔刀、いく世へ消えにし命さえ』  作者: 嵬動新九
江戸跋渉篇 | 第五章 百鬼夜行〈後半〉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
137/163

五章 三十三丁 初々しき遊戯



 狙いを付けた矢は見事に的を射抜き、回転が落ち着くまで子供らはごくりと息を呑んで結果を見守る。


しかし、絵柄が明らかとなれば、落胆と歓喜の声を()()ぜに発した。


『 えぇー!』

『 あれ、外した 』


 白影(あきかげ)はけろりと言い、片目を閉じる。



『 的には当たってますよぉ! おめでとう! 独楽(こま)を差し上げます!』


 親父は無性独楽(むしょうごま)を手渡し、白影は掌の巻き貝を転がし模様を見る。



『 すまんな(わらべ)双六(すごろく)は―― 』



 子供らを見下ろせば、目を輝かせて両手を出し、くれくれと言うように飛び跳ねていた。



『 わぁいっ! ありがとう! お()いー!』


 独楽を受け取った童は大層嬉しがり、巻き貝に(なわ)を巻き付け早くも遊び始める。



『 喜んでいるなら何よりだが 』


 わいわいと上手に独楽を回して遊ぶ姿に、白影は苦笑する。



『 ほれ、次は主じゃ。 今度こそ双六を取ってやれ 』

『 …… 』


 吹き矢を押し付けると渋々受け取りはしたが、黒桜丸(くろうまる)は迷惑そうに(つつ)を眺めている。



『 どうしたのだ? 手本は見たであろう 』


 白影は手拭いを己の頭へ戻し、黒桜丸を台まで誘導する。



その際、二人の容姿を垣間(かいま)見た童と親父は、やはり見間違いではなかったと目を(こす)り開くを繰り返した。



『 ほれ、構えて。 そうじゃ、思いきりじゃぞ 』


 黒桜丸の腰を引いて(ひじ)の角度まで整えてやり、白影は少し離れた位置から娯楽(ごらく)の開始を待った。



だが、一向に円盤が回らず、首を傾げる。


『 回さぬのか?』


『 あぁ…ああ…! それぃっ!』


 目が合えば店主ははっと我に返り、台を回した。



 親父の動揺が円盤に伝わったのか、さっきより回転が強い気がするが、黒桜丸は文句を(こぼ)さずに筒を構え集中する。



やると決めたからには真面目に取り組む姿を、白影が腕を組んで微笑ましく見守っていると、子供らは何故か忍び足でこそこそ(そば)へやって来た。



『 ねぇ…! なんで同じ顔なの !? 』

『 助んとこより似とるー! ねぇなんでっ!? 』


 興味津々に詰め寄る童にまじって、親父も頷きながら聞き耳を立てており、悪戯(いたずら)心が刺激された白影は口角を上げ、同じく声を潜める。



『 ……それはのぉ 』

『 それは…?』


 大袈裟(おおげさ)に身を寄せる白影の雰囲気につられ、親父は生唾(なまつば)を呑み込み、童は背伸びをして聞き入った。



『 それはのぅ――… 』

『 そ…それは… !? 』



 十分引き延ばした末に、白影は打ち明ける。


『 あやつが化け狸(ばけだぬき)だからじゃ 』

『 化け狸ーっ!!? 』


 告げられた(うそ)を真に受け、親父と童たちは叫ぶ。



『 そうじゃ。 ()えておるところに()をやると懐かれてしもうて、それ以来わしに化けては―― 』


『 おい…!』


 すべて聞こえていた黒桜丸は、雄弁(ゆうべん)に語る白影を(にら)んだ。



『 まだ吹いておらぬのか、さっさとせぬか 』

『 てめぇの所為で目が散る 』



 黒桜丸が筒を構え直すと子供達は沈黙し、今度はしっかり成り行きを見守る。が、しんと静まる場に忍び笑う声が目立ち、見物人たちは其方(そちら)に視線が引かれた。



 口を押さえ声を我慢しているつもりでも、白影がくすくすと笑う度に指の隙間から息は()れ出ていた。



 笑われて調子を乱した矢は、へなりと的にすら届かずに失速し、黒桜丸は台へ両手を付いて立腹する。


『 てめぇな…!』

『 すまんすまん! わしもそんな顔で吹いているのかと思うと……()()くじゃ…!』


 まだ笑いの尾を引きながら白影は()び。


不満そうな黒桜丸へ、親父はささと景品を持ってきた。


『 はい、残念。 飴玉だよ。 ()しかったねぇ化け狸の旦那(だんな)

『 うるせぇ。 ……ほら 』


 (わら)で編まれた玉形の()(かご)の中に、一つだけ茶色の飴玉(あめだま)が入っており、黒桜丸はそれを気前良く童に譲る。



『 え! いいのー? ありがとーう!』


 妹に飴玉をやり、食い損ねたであろう男児に渡すと、すでに飴を持っている三人は(うらや)ましがった。



『 いいなぁー! なぁなぁ尻尾(しっぽ)みせて!』

『 ねぇよ! 鵜呑(うの)みにすんな!』



 強請(ねだ)るように(ころも)を引っ張り、(しり)を覗き込む童らを黒桜丸が(しか)り付ける(かたわ)らで、白影は物欲しそうに腹を(さす)る。


『 はぁー…、遊んだら腹が減ったのぉ 』


 そして辺りを見渡し、すぐ目星(めぼし)い店を見付ける。



『 お、麦湯(むぎゆ)の出店か珍しい! 丁度よい(のど)(かわ)いた。 ――ではの、童たち!』


 白影は又しても黒桜丸の肩を捕まえ、別の出店へ引っ張ってゆく。



『 さよならー! 狸のお兄ぃもさよならー!』


 子供達は手を振って二人を見送り、白影は手を挙げて応えると、手拭いを被り直し吹き矢の出店を後にした。





©️2025 嵬動新九

※盗作・転載・無断使用厳禁

※コピーペースト・スクリーンショット禁止

※ご観覧以外でのPDF、TXTの利用禁止

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ