七話 オークと魔法少女Ⅲ
山奥に入り何匹ものオークとエンカウントしたが、何をやってもダメージを受けなかった。
<メスガキの挑発>の他、<痴女の誘惑>や<人妻の誘い>を使用してもオークのチンポが大きくなるばかりで効果がない。
というか改めて考えるとミューズちゃんって属性過多だよね。<人妻の誘い>を入手するためには結婚&NTRイベントをこなす必要があるけど、あれは今思い返してもなかなかエグイお話だった。晩年のe〇f作品みたいな完成度。
とまれ、試行錯誤しているうちに山奥に入り込み、ついには最深部の洞窟まで来た。一周目であればオークの王、王クがいた場所だけど、さすがに復活していないらしい。
玉座のあった場所にはクローン培養槽みたいな装置が鎮座していた。ガラス張りの円柱型であり、中には緑色の液体が満ちている。SF映画に出てきそうな見た目だ。
ウィンドウを開いて調べるコマンドをしてみると、<オーク生成装置>となっていた。オークのクローンを作る機械なんだろうか。
……なんか、二周目のストーリーに関わりそうだな。
欲望でここに来たから、何かフラグや伏線をすっ飛ばしたのかもしれない。後で改めてまたこよう。
オークにも序列があるのか、山奥に入るにしたがって知性を含むステータスが高い傾向にある。すごく頭のいいオークでもいたのだろうか。
「……ん? 見られてる?」
不意に視線を感じた。周囲を確認しても敵はいない。索敵スキルを起動してみると、後方から一匹のオークが近づいてきていた。
う~ん、オークの視線とはまた種類が違うような気がするけど……
「ブヒ――」
声がきこえて思考が途切れる。スキルで感知していたオークが接近してきた。さっきも見た個体なので<全反射>の貫通は無理だろう。
「ダンジョンの最奥の暗がりって、場所的には絶好の陵辱ポジなんだけどなぁ」
昼間からお天道様の下でされる陵辱もいいし、誰の眼も届かない暗がりで犯されるのもまたオツなもの。日本が生み出したわびさびである。
ままならないなぁとため息をついていると、不意に、暗がりの奥で光る赤い目を見つけた。
オークに限らずこの世界のモンスターの眼は赤く光る。敵対モブであるかを判別するためのゲーム的事情だ。暗いフィールドで理不尽な不意打ちを避けるための配慮でもある。
違和感にはすぐに気づいた。暗がりに潜む赤い目の数が加速度的に増えている。一匹見たら三十匹はいると思わなければならないあの生物のように。
「……どゆこと?」
初期のドラ〇エみたいな理不尽を避けるため、通常RPGは雑魚敵とのエンカウント率が調整されている。このゲームも例に漏れていないはずだが、目の前には十を越えるオークが集結していた。
赤い目の集合体はズンズンと近づいてくる。反射的に私は後ずさった。安全だとわかっていても、本能的恐怖が全身の筋肉を硬直させる。
「「「ブヒーーッ!」」」
一斉に突撃してきた! なんかキモイ!
頭の中がこんがらがって立ち尽くしていると、瞬く間にオークの群れに囲まれた。360°逃げ場を塞がれている。陰鬱な学園ドラマみたいな古式ゆかしきリンチの作法である。無数の赤い瞳に舐めまわすような視線を向けられていた。下等な獣畜生のくせに統率の取れた動きだ。
ちょっと、テンション上がる。
いじめ系のエロゲは結構好きなんだよね。輪姦も悪くない。
「ブヒィィィィィ、ブヒィィィィィィ」
オークたちは己の性器の力強さを誇示しつつ、鼻息を荒くしている。広くはない空間に発情した獣がこれだけ集まるとさすがに臭い。野生の豚の不潔さと発情した男の汚らわしさの悪魔合体だ。暴力的な臭気があたりを満たしている。
うむ、嫌いじゃない。さすがにちょっと吐きそうだけど、この匂いをかがされてると思えば犯されている気分になれる。
「ブヒッ!」
一匹のオークが突撃してきた。<全反射>が起動する。攻撃がはじかれて困惑していたが、やはり最奥にいるオークはエリートなのか、諦めずに攻撃を続けてきた。パンチがだめならキック、キックがだめなら張り手やつかみと手を変え品を変えやってくる。
他のオークたちも同時に攻撃してきた。三匹のオークが三方向から同時に攻撃してくるも、当然貫通しない。しかし誰もが諦めずに試行錯誤を繰り返しているので、視界がオークの肉で埋め尽くされていた。何としてでも犯そうとする姿勢に感動である。
エリートオークは性欲もエリートなのか、そそり立ったバベルの塔が<全反射>のバリアに突き立てられている。ゲーム本編ではモザイクがかかっていたのでこうも間近で見るのは初めてだ。中々にグロい。それが三本分向けられているのでシュールな光景だった。
いや……待てよ……
これは実質、竿見せつけプレイなのでは?
豚の裸体と性器を至近距離で見せつけられるのは視覚的な陵辱である。そして、この臭気にさらされるのは嗅覚的な陵辱、ブヒブヒ鳴くオークの下品な声は聴覚的な陵辱と言っていい。
シチュエーション的にも、絵面的にも陵辱みたいなものだ。
つまり……
実際に触れられていないだけで、今の私は犯されているというカテゴリに入るのでは?
味覚的、触覚的陵辱は諦めるしかないが、五感のうち三つが犯されていたらそれはもう疑似的な敗北Hだ。
そう、偽物の陵辱である。
けれど、偽物が本物に適わないなんて道理はない!
そう考えると、興奮がさらに高まってきた。あとはこの偽物を限りなく本物へと近づけるため、味覚と触覚に刺激を加えればいい。
すなわち……私の得意なアレである。
記念すべき初めての陵辱だ。できる限り私の理想をかなえてみたい。服はどこまで脱いだほうがいいだろう。シチュエーションやセリフはどのモデルを参考にしたらいいだろう。メスガキシチュや痴女シチュで方向性はまったく別のものになる。多様な性癖は逆に選択を難しくさせていた。
いや、ここは王道の魔法少女ものらしく快楽堕ち系でいってみようか。
ならば最初は服を脱がず、嫌がるそぶりを見せつつも徐々に落ちていく感じで……
「<――アルティメットチャージ!>」
自分の秘所に手を伸ばそうとした瞬間、後ろから女の子の声が聞こえてきた。
……へ?
待ってアルティメットチャージって言った?
それレベル75以上で獲得できる究極魔法の詠唱だったはずじゃ……?
というよりこんな場所にいったい誰が⁉
「――幻馬よ駆けよ! <ユニコーン・ジャッジメント!>」
瞬間、周囲を青白い光が包み込んだ。
あ~~~~~~~~‼
それだめ! せっかく……せっかく今いいとこなのに~~~~~~~~~~!
せっかく私を犯そうとチンポをおったててるオークたちが消えちゃう!
しかし無情にもまぶしさがあたりを満たし、目を細める。その中で朧げな輪郭のユニコーンが見えた。ここまで発動してしまっては止められるはずもない。聖なる光が散乱し、不浄の存在を消し去っていく。
あ、ああ……私の疑似陵辱が……
今の一瞬でたくさんセリフとかシチュエーションとか考えてたのに……
しばらくして目を開けると、狭い空間に敷き詰められていたオークが一瞬にして消え去っていた。騒がしかった空間が静まり返り、暴力的な臭気もきれいさっぱり消え去っている。
浄化系魔法の最上級・ユニコーンジャッジメント。穢れ属性持ちの雑魚モンスターを問答無用で浄化するチート業だ。ちなみに私は心が汚れているだけで、外側は純朴少女なので効いていない。
こんな究極魔法を使えるのなんてこの世界に一人しかいないはず。
「……まさか」
振り向くと、予想通り一人の女の子が立っていた。
「一週間ぶりですね、お姉さま!」
水色の髪をはためかせ、嬉しそうに駆け寄ってくる。
魔法少女マジカルリリス。
私とともに魔王と戦った、仲間である。




