六話 オークと魔法少女Ⅱ
山のふもとへ到着すると、報告通り数匹のオークがたむろしていた。ギトギトの油にまみれた全身に、男性器が露出した下半身。体格はちょうど私の二倍くらいある。
チュートリアルで戦うモンスターだ。能力値は見た目通りに高いものの、露出したキンタマを叩けば即死するという弱点がある。
「ブヒッ?」
一匹が私に気づいた。目が合うなりいやらしい笑みを浮かべて立ち上がり、のっそのっそと近づいてくる。オオカミのような牙の隙間からはよだれを垂らしており、醜悪さを詰め込んだようなデザインだ。
他のオークもその後ろからやってくる。俊敏性はゼロ、言語能力はないところを見るに一番下等なタイプだろう。
ゆえに、そそる。
メスガキもそうだが、弱い生物に主導権を握られるのはマゾ性をくすぐる。知性も実力も私のほうが上なのに、体格差だけでなすすべなくやられちゃう……っ! 的な。
問題は雑魚敵が<全反射>を突破できないところ。
しかしそれは通常の状態であればの話だ。色々と試すべき条件がある。
まずは……
「あ~っと、石に躓いて転んじゃったな~~~~~~~」
スッテンコロリン。私はオークの目の前にうつぶせて倒れこむ。
ゲーム的には<転倒>状態となり、一ターン休みになるはずだ。その状態で背中にダメージを食らうと確定でクリティカル判定になる。
会心の一撃は反射技を貫通する。国産RPGの常識だ。
……の、はずだったが、振り下ろされたオークのこぶしはきっちりと反射され、私は無傷だった。
「ブヒッ⁉」
オークたちは困惑している。カモがネギをしょってやってきたと思ったらレベルカンストの魔法少女だったから当然だろう。頭の中はすでにHでいっぱいだったのか、バベルの塔みたく性器がそそり立っている。
――だが!
今日の私はここで諦めない!
ここで終われば前回と一緒。今は人目がないので、ここまま倒れ続ける。
「ぶ、ぶひっ?」
あ~うん困惑しますよね。なんでこの人は最強なのに勝手に転んで立ち上がらないんだろうって。そのまま存分に攻撃してもらっていいですよ。ええ。自慢のこぶしを振り下ろしちゃって。
別のオークが近づいてきて、今度は足で踏んづける。反射されても足裏なら痛くないと考えたのだろう。何度も何度も攻撃してくるも、そのすべてが反射されていた。
絵面としては悪くないんだけどな。かわいい女の子がオークに囲まれて、浦島太郎のカメさんみたく何度も踏みつけられている。這いつくばってる体勢を含まれば興奮できなくもない。オークと私のレベルが逆だったら完璧だったのに。
だがしばらくすると諦めたのか、その個体は意気消沈したように離れていく。
他の個体も気味が悪いのか、私を中心に数歩後ずさった。見ると、天高くつきあがっていたチンポが屈服するようにしなっている。
負けるほど 頭を垂れる チンポかな
「いや待って! なんでそこで諦めるの!」
「ぶ、ブヒ?」
焦って立ち上がる。
「一度の失敗で諦めちゃだめだよ。目の前に世紀の美少女がいるんだよ。そんなことで諦められるほど、あなたたちのそそり立つチンポは情けないの? 一度ほしいと思ったものは何としてでも奪うのがオスのオークってものでしょう!」
力説しているが、言葉は通じていないだろう。下等生物ごときにわかるわけもない。
けれど、熱意は通じる。言葉がわからなくたって、私の胸で熱く燃え盛る情熱は伝えられる。
必要なのはパッションだ。何が何でも美少女を陵辱してやるという熱いハート。私はせめてそれを伝えようと語り続けた。
「この雑魚! 短小! インポ! 美少女を前にして萎えるようなイチモツなら去勢されてしまえこのざこざこざ~~~~こ!」
――ブチッ!
不意に、何かが切れるような音がした。
「……あれ?」
ふと、オークたちのオーラが変わった。うつむいていた男根が次第に膨張していき、こぶしを突き上げる革命家のごとくそそり立っていく。
おチンポ様だけではない。油ギッシュな脂肪に包まれていた豚の身体が圧縮されるかのような変化をしている。さらに進むと全身が海綿体のように膨張し始めた。
な、なにが起こって……?
おそらくステータスも上昇している。いったい何が……
……あっ。
まさか、と思い視界の左端にあるウィンドウを開く。バトルログを見ると、私が<スキル:メスガキの挑発>を行っていた。
さっきの「ざこざこざ~こ」の部分がスキル判定になっていたのだ。相手の攻撃力を最大まで上げる代わりに、怒り状態を付与する特殊攻撃である。
これなら……イケる!
<メスガキの挑発>は怒り状態を付与して命中率を下げ、運ゲーを仕掛ける技となっているが、ほとんど自決用だ。特定のモンスターに対して挑発して敗北すると、通常の敗北Hとは別に”わからせH”イベントが行われる。
敗北するための技なんだから、<全反射>を貫通する可能性は十分にある。
勝算、ここにあり。
私はもう一度スッテンコロリンし、背中を向ける。
「さあきなさい! オスオークの全力を私にぶつけて!」
「ブヒイイイイイイイイイ!」
オークたちは膨張した右腕を振り上げて突撃してくる。
丸太のようなその筋肉。浮き出た血管。まさに、陵辱モンスターにふさわしい。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
オークは飛び上がり、全体重をこめて右腕を振り下ろす――
――カァン!
しかし、響いたのは甲高い音だった。
バトルログ:<全反射>が発動。オークに134のダメージ。オークは倒れた。
「ブヒ……」
背中からか細い断末魔が聞こえた。反射ダメージを受けたオークの身体は情けなく霧散していく。
……ダメじゃん。
「ブヒ……」「ブヒ……」「ブヒ……」
その他の個体も波状攻撃のごとく突撃してきたが、すべて反射ダメージで爆散した。
……ダメじゃん!
まあ薄々ムリだろうなぁと思ってたけども。だから勢いでごり押して何とかならないかなぁと思ってたけども。
あ~も~! まだまだ諦めないからね!




