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20話 百合ゆリリスな魔法少女Ⅶ

 頭の中に溜まっていた熱が抜けていくような感覚があった。


 ……あれ、私は何をしてたんだっけ……?


 気が付くとリビングに一人で座り込んでいた。寝室に入っていくリリスちゃんの姿が見えるも、なぜ私から逃げるように去っていくのかがわからない。


 白百合の媚薬を持ち帰ったところまでは覚えている。


 それをどうしたんだっけ……?


 周囲を見るとテーブルの上にホットケーキがあった。蜂蜜がたっぷりと塗られており、甘い匂いが漂っている。一口分だけフォークで切り取られて欠けていた。何かひと悶着でもあったのか、テーブルの上は散らかっている。


 待って、本当に何があったの……?


 頭を叩いて記憶を探ってみるも思い出せない。嫌な予感がしてテーブルに近づくとほのかに刺激臭が漂ってきた。


 このホットケーキには白百合の蜜がかかっている。急いでポシェットの中を確認すると、紙に包んだ白百合の蜜が半分ほど減っていた。


 えっと……?

 つまり……?


 ホットケーキの蜂蜜に白百合の蜜を混ぜる→私とリリスちゃんが食べる→何かが起きる→リリスちゃんが逃げるように寝室に入っていく。


 Hなことがあったんですか?

 Hなことがあったんですよね?


 記憶がないってことは紆余曲折を経て私がホットケーキを食べたのだろうか。自分の身体を見下ろすと少しだけ衣服が乱れていた。脳を麻痺させるような熱は抜けたが、まだ全身が火照っているような気がする。


 もしかして暴走してリリスちゃんを押し倒した……?


 頭は混乱していた。何をすればいいのかわからなったが、とにかく真実を確かめたいという欲求に支配されてしまい、衝動的に寝室の扉をノックしていた。


「あの、リリスちゃん、ちょっといいかな?」


 返事はない。

 よくわからないけど、私の膝はがくがく震えていた。


「今日のことなんだけど、ちょっと、聞きたいことがあって……」


 そこからどう言っていいのかわからず黙ってしまう。しばらく待っても返事が返ってこないので、もう駄目だと思い踵を返す。


 その時、扉が開いた。


「お姉さま……」


 思わずドキッとした。


 リリスちゃんの顔は紅潮していて、焦点の合わない瞳で私を見ている。うつむく姿は少女的なかわいらしさと煽情的な雰囲気を同時にまとっており、見ているだけで私の心拍数が上がっていく。


 泣き出しそうな潤んだ瞳が、窓から差し込む光に照らされて煌めいていた。


 リリスちゃんが近づいてきて、私の胸に顔をうずめる。

 その体は熱くて、やわらかくて、甘い香りがした。頭の中がリリスちゃんの魅力に支配されていくような感覚になる。


 なんかHな雰囲気じゃないですか?


「ごめんなさいお姉さま……わたしが悪いんです。できれば今日のことは忘れてください」

「そんなことないよ! 悪いのは全部私なんだから」


 何が起こったのかはよくわからないけど、そもそも媚薬を使うつもりで持ち帰ったのは私だし。


「でも……お姉さまにあんな乱暴なことをして……どう謝ればいいのか……」


 いま”乱暴なこと”っていいました⁉

 もしかして私が襲われたの?


 文脈的に考えるとそうなんだろう。その場合、どれだけ意識が朦朧としていたとしても、私が断わるわけがない。


 つまり……今は事後!


 媚薬の効果でレズセックスを果たして気まずくなってる最中!


 私はリリスちゃんを抱きしめる。


「大丈夫だから。私がリリスちゃんのすることを嫌がるわけないし、嫌いになるわけないでしょ?」


 頭をなでると、リリスちゃんは顔を上げた。


 陰のある笑顔を浮かべる。


「お姉さまは優しいですね」


 心臓をわしづかみにされるような感覚だった。


「でもやっぱり、今日のことは忘れてください。わたしも頑張って普通にしますから」


 息が詰まる。無意識のうちにこぶしを握り締めていた。


「なんというか、関係性は一つ一つ重ねていくものだと思うんです。飛び越えようとするのは間違いなんです」

「……そっか」


 少し寂しいけど、リリスちゃんの顔を見ていると何も言えなかった。

 リリスちゃんがそのつもりならば、先輩の私はじっと待とう。


 大丈夫、少し先延ばしするだけだから。






 その後、一人で散歩に出かけた。


 一人にならないとあふれる感情に押しつぶされて死にそうだった。


 村のはずれの高原にやってくる。モンスターがいて危険なので、普通の村人はここにこない。晴天の下でなだらかな緑がどこまでも広がっていた。


 私は叫ぶ。


「なんでHの記憶が残ってないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 無念だった。

 せっかくクエストをこなして媚薬を手に入れ、念願のレズセックスにたどり着けたのに記憶が飛んでしまうなんて。


 どんなプレイをしたんだろう。おっぱいとか揉んだのかな。いや媚薬に頭をやられていても私はチキンなところがあるから激しいことはしていない気がする。想像するだけで楽しいけど、同時に悔しくてたまらなかった。


「リリスちゃん可愛すぎるでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 なにあれ可愛すぎない? オタクはそういうの軽率に国宝認定しちゃうよ?

 神。尊い。あまりにもHすぎる。十回くらい結婚してほしい。

 二次元美少女が目の前にいて私を慕ってくれるなんて夢みたいだ。


「転生ばんざーーーーーーーーーーーい!」


 一通り叫ぶと感情は落ち着いてきたけど、頭の興奮は収まりそうになかった。


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