16話 百合ゆリリスな魔法少女Ⅲ
「も、もうダメェ~」
妖精さんの身長は十センチほど。魅了魔法で動きが鈍くなった隙に接近し、二センチに満たない女性器に刺激を加える。手〇ンなんてしたことないけど、スキル:床上手のおかげですぐに潮を吹いた。妖精さんの全身がビクビクと痙攣して床に倒れる。
いかにもタチです、みたいな容姿なのに無様なアへ顔で倒れているのでキャラ崩壊もいいところだ。
スキル:床上手は一周目のストーリーで妖精を倒すために習得したが、女性系モンスター全般を一撃必殺なので中々のチートスキルだ。今からでもタイトルを~最強魔法少女はレズセックスで無双する~に変更しても問題くらい。
「……容赦ないね」
エニグマはちょっと引いていた。
「さあ行こう! 妖精たちの百合園へ!」
「妖精とのエンカウントは避けようね。床上手ばかり使っていると、百合園の世界観が壊れる」
わたしもそう思う。
妖精さんが倒れたことで不思議な壁がなくなったので関所を越える。
ちょっとした浮遊感。その後、霞がかった世界が徐々に輪郭をなしていき、別の世界へと着地する。
「わ……綺麗……」
白い世界だった。一面に白百合が咲き乱れ、あちこちで美少女型の妖精が飛んでいる。頭上には雲一つない青空が広がり、お日様は柔らかな白い光を注いでいた。
k〇y作品に出てきがちな幻想世界みたいなもんだ。光の玉が浮いていそうな雰囲気である。
人間が来るのを想定していないのか道は整備されていない。咲き誇る花々を踏みつけるのは胸が痛かったが、ガイド矢印に従って歩き出した。
わたしはぐっと伸びをする。
「ん~、空気が澄んでるよ。心が浄化されていく気がする~」
「……そうかな?」エニグマはジト目で言う。
「花と妖精と青空。あとはな~んにもない真っ白な世界。イノセントワールドって感じだよね」
「性欲はあるみたいだけどね。ごらん」
「へ?」
エニグマが指し示すほうを見ると、二匹の妖精が身体を密着させていた。
じゃれあってて微笑ましいなぁ、なんて光景じゃなかった。
「ん……ん……ダメ……」
互いが互いの股間をまさぐっている。必死に声を押し殺しているけど、一度意識してしまったら水音まで聞こえてきた。
「…………そっか。百合園の楽園だもんね」
聖書的な楽園とは相いれない世界観だった。
よくよく周囲を観察すると、いたるところでレズセックスが行われている。というより性行為をしていない妖精が存在しない。これだけの数が飛んでいるのに、そのすべてが性器を露出していた。
楽園……まあこれも楽園の形か……
私の中で「エッチなのは素晴らしいことです!」と「なんかそれは違うよね」が対立している。K〇y的なノスタルジック世界を期待していたから解釈違いだった。
何とも言えない気持ちのまま楽園を進んでいく。
幸い妖精たちはみんなセックスに夢中なので戦闘は避けられた。十分も歩くと花畑の向こう側に禍々しいオーラをまとったログハウスが見えてくる。
花畑の中にぽつんと一軒家。一階建ての小さな建物ながら黒いオーラを周囲にまき散らしており、楽園の異物だった。
「pi――――」
ログハウスの近くでレズセックスをしていた妖精さんが、闇のオーラに追いかけられている。オーラには引力があるのか、必死に逃げている妖精さんが吸い込まれようとしていた。
「<ホーリーショット>!」
私は光属性の攻撃を放ち、闇のオーラを相殺する。妖精さんは必死なのかこちらに気づかなかったが、一瞬の隙をついて逃げていった。
ひどいことをする。
「あれがオークの住処だろうね。まずは偵察を重ねて――」
「よ~し、突撃しよう!」
「……まあ、キミがいいならいいけどさ」
本来は偵察を重ねてボスの情報を集めてから挑むんだろうが、レベルカンストなので関係ない。
ここまで来たらもう待てない。
だって、一言文句を言ってやらなきゃ気が済まない。
ログハウスに近づくと闇のオーラが身体にまとわりつき継続ダメージを受ける。自動回復スキルがあるので無視して扉を蹴飛ばした。
「たのもーっ! 豚の駆除に来ました!」
「ブヒッ⁉」
中には二匹のオークがいた。二匹とも窓際で椅子に腰をかけていたが、私を見つけると瞳を赤くして戦闘態勢に入る。興奮しているのか鼻息が荒かった。
やっぱり、と舌打ちをする。
あれは……種族名<インドアオーク>。楽園の侵犯者、という二つ名を持つ。他のオークに比べて肥満気味であり、眼鏡をかけた顔の造形はゆがんでいる。
通称、百合の間に挟まる豚(♂)。
この世界で、私がもっとも許せない生物の一つ。
あれは存在してはいけないものだ。生まれてきちゃいけなかったものだ。
オークは窓から妖精さんのレズセックスを嘗め回すように品定めしていたのだろう。むき出しのチンポはガチガチに勃起し、
なんとなく予感はあった。百合作品で省かれがちな男の存在をチラ見せしてきたり、百合園の楽園にふさわしくない邪悪なオーラを感知していたり。
このクエストは百合の物語ではない。
邪悪な百合豚を成敗する物語だ。
「……なんか怒ってる?」エニグマが窺うように言う。
「邪悪を前にした魔法少女の普遍的な正義の怒りだよ」
別に豚さんに対して個人的な恨みはない。妖精さんたちのレズセックスが好きなわけでもないし、百合園の楽園に思い入れもない。
私はただ百合が好きなだけ。
そして、美しいものを汚す悪を許せないだけ。
汚物は消毒するに限るものの、安易に炎魔法は使えない。周囲の花畑が燃えたら大惨事だ。
「アルティメットチャージ」
「ブヒッ⁉」
豚さんたちのレベルは40程度。二周目補正で強化されているものの、今の私なら中級魔法で十分だろう。それでもなお、究極魔法を選択した。
塵の一つも残さない。
「ブビィィィィィィィ!」
オークは焦って臨戦態勢に入るもすでに遅い。
究極魔法のチャージは終わっている。
「幻馬よ駆けよ。ユニコーン・ジャッジメント!」
光属性の魔法であればモンスターだけを浄化できるので、周囲への被害は及ばない。
最大出力をもってオーク二匹を消滅させた。




