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第9話 夜勤倉庫の小さな作戦室

莉央は行動が早い。


 使われなくなった休憩室を見つけると、次の夜には折りたたみ机と中古の白板を持ち込み、「作戦室」と油性ペンで書いていた。


「夜勤補給便、ここから始めます」


「名前まで決まってるんですか」


「地味で覚えやすいのが一番」


 作戦室には、私と莉央、搬入口の古株作業員で三十八歳の塚本、それから時々片桐が寄るようになった。全員、派手さとは無縁の顔ぶれだ。


 私は白板に、階層別の必要物資と欠品しやすい時間帯を書き出す。莉央はその横で配信のコメントを分類していた。


「これ見て。『中層南ルートは魔力電池の消耗が早い』って報告、三件重なってる」


「送風機が古いんでしょう。湿気が強くて消耗が速い」


 塚本が感心したようにうなる。


「姉さんの頭の中、どうなってんだ」


「仕事の蓄積です」


 配信は、討伐映像ではなく補給表と現場の工夫ばかりなのに、じわじわ視聴者が増えた。


 小規模クラン、夜勤の清掃員、搬送ドライバー、救助班の家族。夜に働く大人たちが、必要な情報を取りに来る場所になっていく。


 初めて、自分の知識が孤立していないと感じた。


 夜のダンジョンには、派手な主人公より、地味な連絡線の方が足りていなかったのだ。


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