第8話 偽装返品の山
夜勤搬入口の隣には、昼から下ろされた返品予定箱を一時的に積むスペースがある。
これまでは気にも留めていなかった。返品は昼勤の担当で、夜勤は触るなと決められていたからだ。
けれど、山積みの箱を前にすると、【棚卸】の白文字がやけに濃く光った。
返品予定・十二箱。
実態・未開封新品。
出庫先・白鷺メディア案件。
「……そういうこと」
箱のロット番号は、行方不明扱いになった二十四箱の後続便と連番だった。つまり一度スポンサー案件へ流し、形だけ返品に見せかけて帳簿から消している。
しかも返品理由の欄には『夜勤管理不備』と打たれていた。
私のせいにするための紙が、先に用意されていたわけだ。
莉央を呼ぶと、彼女は箱の山を見て眉を上げた。
「ここまで綺麗だと、逆に悪意しかないね」
「写真とロット番号を全部残します」
「映像も回す?」
「まだ早いです。隠し倉庫の線がつながるまで伏せたい」
私は番号を端末とは別のメモ帳にも写した。デジタルの記録はいくらでも消される。紙は面倒だけど、なくなりにくい。
その夜の配信では返品の話は出さなかった。ただ、補給センターでは「使わない物資を出さない」「出した物資を戻したことにしない」という当たり前の原則だけを静かに話した。
コメント欄に、こんな一文が流れる。
『その当たり前を守れない運営、だいぶ多いんだよな』
画面の向こうにも、同じ匂いを嗅いできた人がいるらしい。




