第7話 赤字クランに足りない回復薬
《ラフギア》という三人組の小規模クランが搬入口へ来たのは、配信を始めて三日目のことだった。
全員三十前後の会社員探索者で、昼はそれぞれ別の職場に通い、夜だけダンジョンに潜る。装備は擦れているのに、回復薬だけ妙に高級品を抱えていた。
「すみません、大槻さん」
リーダーの高瀬が申し訳なさそうに箱を差し出す。
「毎回、赤字なんです。売店に言われるまま買ってるんですけど、なんかおかしくて」
私は回復薬のカートリッジを手に取った。
【棚卸】を使うと、内容量の表示が浮かぶ。新品百ミリと印字されているのに、中身は七十しかない。
「これ、最初から減ってます」
「え?」
「未開封なのに、規定量が入っていません。しかもあなたたちの階層なら、この等級は過剰です」
私はその場で必要量を組み直した。回復薬を下位等級へ落とし、代わりに結界テープと照明電池を増やす。派手じゃないけれど、事故率は確実に下がる。
「そんな買い方でいいんですか」
「いいんです。補給は見栄で組むと破綻します」
彼らはその夜、初めて黒字で戻ってきた。
「帰り道にまだ牛丼食えます」
高瀬が本気で感動していて、私は少し笑ってしまった。
その様子を配信で見ていた視聴者が、「役立つ」「こういう話をもっと聞きたい」と書き込む。討伐配信の切り抜きより、補給表の見直しが伸びるなんて、数日前まで考えもしなかった。
でも、数字は嘘をつかない。
足りないものをちゃんと足すだけで、潰れなくて済む夜がある。




