第5話 バズったのは討伐より補給だった
昼過ぎに目を覚ますと、端末の通知が異様な件数になっていた。
莉央が深夜に切り出した映像が、配信サイトで急に広まったのだ。
『討伐配信より先に救助を動かした夜勤主任』
『補給で人を助けるダンジョン現場が渋すぎる』
そんな見出しが並んでいる。コメント欄では、派手な必殺技より「箱の場所を当てる人」が気になるらしい。世の中、何が刺さるかわからない。
私は布団の中で頭を抱えた。
有名になりたいわけじゃない。私はただ、在庫表が合っていてほしいだけだ。
その日の夜勤に入ると、宮坂が珍しく地下まで降りてきた。
「勝手な映像で会社名が出た。君は余計なことを」
「余計なのは、救援物資をスポンサー控室に置いた人です」
宮坂の笑みが一瞬だけひきつる。
「調査中だ。軽率に騒ぐな」
「じゃあ、軽率じゃない形で残します」
私は昨夜控えたロット番号の写しをしまい直した。宮坂はそれ以上触れずに去っていく。
入れ替わるように片桐が来て、私の机に缶コーヒーを一本置いた。
「現場は助かった」
「それで十分です」
「いや、十分じゃない。見えるものがあるなら、見えるうちに残せ」
少しして莉央から通信が入る。
『夜勤専門で、補給と安全だけを追う小さな配信やらない? スポンサー映えしないけど、現場には要るでしょ』
私は即答できなかった。
けれど、昨夜のコメント欄で一つだけ、忘れられない言葉があった。
『派手じゃなくても、こういう人がいるから帰ってこられる』
なら、残す価値はあるのかもしれない。




