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第4話 消えた救援物資は壁の向こう

夜明け前、搬入口が少し落ち着いたところで、私は北側冷蔵壁の裏を改めて確認した。


 回復薬の箱には、本来ないはずの白鷺メディアの搬送シールが貼られている。救援物資の箱にスポンサー用の識別コードが混じること自体おかしい。


「こいつは面白いね」


 背後から声がして振り向くと、細身の女性がカメラを肩にかけて立っていた。真城莉央。二十九歳。夜勤専門の取材記者で、事故現場と物流の流れを追う変わり者だと聞いたことがある。


「さっきの救助、撮ってたの」


「許可なく?」


「許可取りに行ってる間に人が死ぬ場面、何度も見たから」


 言い方は軽いのに、目は真面目だった。


 莉央が壁の裏の箱を撮りながら口笛を吹く。


「これ、夜勤が勝手に隠せる量じゃないね」


「ええ。昼の搬入権限が必要です」


 【棚卸】を使うと、白文字がさらに奥を指した。冷蔵壁の内側だけじゃない。搬入口隣のスポンサー控室、その倉庫棚にまで、回復薬四箱、魔力電池二本、非常食六ケースと残数が浮いている。


「控室にもあります」


「スポンサー控室?」


 片桐を呼び、立会いのもとで鍵を開けてもらうと、中には《煌牙》のロゴ入りタオルや配信用照明に混ざって、救助用の物資がきっちり積まれていた。


 現場の空気が変わる。


 単なる手違いでは済まない。


「証拠は押さえる」


 片桐が箱の番号を撮影し、私は搬出履歴を控える。莉央はカメラを下ろさずに言った。


「大槻さん。これ、埋められないようにした方がいい」


 私もそう思った。


 表に出るのは好きじゃない。けれど、黙っていたら、また次の夜に必要な箱が消える。


 もう一度だけ責任を押しつけられるのは我慢できても、次の救助便を欠品で出すのだけは絶対に嫌だった。


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