第3話 【棚卸】は欠品の場所まで見える
救助班は私の指示どおり、隠されていた回復薬と魔力電池を回収した。
投光フレアは仮置きパレットの一番下。誰かがわざと別便の資材で覆っていた。見つけた瞬間、片桐が私を一度だけ見た。その視線には疑いより先に、使える情報源を確保したい現場の判断があった。
「次は?」
問いかけられて、私はまた荷札束を握り直す。
視界の白文字は消えなかった。
搬入口の半径二十メートルほどにある物資の種類、数、置き場所。帳簿と一致していないものほど、輪郭が濃く見える。
頭の奥で、ぴたりと名前がはまった。
【棚卸】。
あまりに地味で、笑うしかないスキル名だった。けれど今、この地味さで人が助かる。
「簡易結界杭が二本足りません。車両四号の荷台の下に落ちています」
作業員が潜り込み、本当に二本を引っ張り出した。片桐の部下が低く息をのむ。
「班長、これで西搬路の仮封鎖ができます」
「行くぞ」
救助班が出ていく直前、片桐が短く言った。
「大槻主任。そこを離れるな。残数が動いたらすぐ教えてくれ」
命令口調だったけれど、不思議と嫌じゃなかった。初めて、私の数えた数字が言い訳ではなく判断材料として扱われたからだ。
その夜、一時間後に戻ってきた救助班は、崩落地点に取り残されていた探索者七人全員を生還させた。
「回復薬が十分あったから持ちこたえた」
片桐は報告書を書きながら、簡潔にそう言った。
「どうして場所がわかった」
私は少し迷ってから答えた。
「見えたんです。荷札の残数と、置き場所が」
普通なら信じてもらえない話だ。けれど片桐は鼻で笑わなかった。
「なら次も使え」
それだけだった。
地味で、面倒で、誰も褒めなかった私の仕事が、初めて現場の真ん中に立った夜だった。




