表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

第3話 【棚卸】は欠品の場所まで見える

救助班は私の指示どおり、隠されていた回復薬と魔力電池を回収した。


 投光フレアは仮置きパレットの一番下。誰かがわざと別便の資材で覆っていた。見つけた瞬間、片桐が私を一度だけ見た。その視線には疑いより先に、使える情報源を確保したい現場の判断があった。


「次は?」


 問いかけられて、私はまた荷札束を握り直す。


 視界の白文字は消えなかった。


 搬入口の半径二十メートルほどにある物資の種類、数、置き場所。帳簿と一致していないものほど、輪郭が濃く見える。


 頭の奥で、ぴたりと名前がはまった。


 【棚卸】。


 あまりに地味で、笑うしかないスキル名だった。けれど今、この地味さで人が助かる。


「簡易結界杭が二本足りません。車両四号の荷台の下に落ちています」


 作業員が潜り込み、本当に二本を引っ張り出した。片桐の部下が低く息をのむ。


「班長、これで西搬路の仮封鎖ができます」


「行くぞ」


 救助班が出ていく直前、片桐が短く言った。


「大槻主任。そこを離れるな。残数が動いたらすぐ教えてくれ」


 命令口調だったけれど、不思議と嫌じゃなかった。初めて、私の数えた数字が言い訳ではなく判断材料として扱われたからだ。


 その夜、一時間後に戻ってきた救助班は、崩落地点に取り残されていた探索者七人全員を生還させた。


「回復薬が十分あったから持ちこたえた」


 片桐は報告書を書きながら、簡潔にそう言った。


「どうして場所がわかった」


 私は少し迷ってから答えた。


「見えたんです。荷札の残数と、置き場所が」


 普通なら信じてもらえない話だ。けれど片桐は鼻で笑わなかった。


「なら次も使え」


 それだけだった。


 地味で、面倒で、誰も褒めなかった私の仕事が、初めて現場の真ん中に立った夜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ