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第37話 本当に必要な優先便
停電の最中、雨港側から最悪の連絡が入った。
スポンサー共同イベント便が雨港北岸で待機しており、先に通せと外から圧力がかかっているという。
「冗談じゃない」
塚本が吐き捨てた。
私は第三搬路の中で立ち止まり、手元の端末を見た。イベント便の中身は景品用回復パックと撮影照明。対して今必要なのは、毒棘傷対策の解毒薬と退避誘導用の結界杭だ。
比べるまでもない。
けれど、公式に優先を変えるなら責任者の決裁が要る。
「私が切ります」
端末へ決裁欄が開く。差し戻しの余地を残さない、責任者署名の画面。
以前の私なら躊躇したかもしれない。名前を書いた瞬間、全部押しつけられる気がしていたから。
でも今は違う。
「東港夜間補給ハブ責任者、大槻茉尋名義で、イベント便を後順位へ変更。救助便を第一優先にします」
片桐が私の隣で言った。
「救助班はその判断を支持する」
その一言で、指先の迷いが消えた。
私は署名を押し、優先便を切り替える。
必要な便が、ようやく先へ進んだ。
誰かに選ばせるのではなく、自分で選んだ順番だった。




