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第36話 停電した連絡橋
トラブルは、だいたい一番嫌な夜に来る。
雨港で公開棚卸しを終えた二日後、低気圧と海霧が重なり、連絡橋の風速警報が上がった。そこへ追い打ちのように、橋の中継電源が落ちる。
『連絡橋、停電。搬送便一時停止』
無線が鳴った瞬間、私は白板の前で立ち上がった。
東港には解毒薬八箱。雨港には負傷者便三台。橋が止まれば、全部が詰まる。
「第三搬路を開けます」
片桐が即答した。
「人員はこっちで出す」
私は床に手をつく。白文字が暗い搬入口の中でいつもより明るく浮いた。
携帯投光器六台・整備棚上段。
予備電池四本・旧工具庫。
第三搬路手動解錠キー・監視盤裏。
「塚本さん、投光器。莉央さん、第三搬路の入口だけ映してください。位置情報は出さないで」
「了解」
停電した橋の上ではなく、海風の吹き込む古い通路で、人と箱が静かに流れ始める。派手な音もない。ただ、必要なものを必要な順で押していく。
こういう夜を私は知っている。
暗いほど、順番を間違えると終わる夜だ。




