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第35話 雨港配信の公開棚卸し
公開棚卸しは、派手な企画じゃない。
棚を開けて、箱を数えて、必要な理由を説明するだけだ。けれど今、いちばん必要なのはその地味さだった。
雨港の臨時配信ブースで、私は白板の前に立つ。隣には莉央、後ろには塚本と《ラフギア》の三人、それから雨港の若い職員たちが並んだ。
「今日は討伐映像ではありません」
私は最初にそう言った。
「解毒薬がどう届くか、冷却箱がなぜ必要か、優先便を誰が決めるべきかを話します」
コメント欄は最初こそ静かだった。でも実棚と帳簿の差をその場で示し、ラベルの貼り替え方、共通規格の違い、保冷溝の有無を見せていくと、反応が一気に増えた。
『こういうのが見たかった』
『現場の説明、わかりやすい』
『バズ狙いより信用できる』
私は必要量を一つずつ読み上げた。重傷退避便、中層作業員便、小規模クラン便、清掃班便。
誰が強いかではなく、誰が今困っているかで並べる。
ただそれだけのことが、画面越しにもちゃんと伝わっていく。
「配信は、物資を釣るためじゃなくて、必要な仕組みを共有するために使います」
その言葉を書き込んだ瞬間、作戦室で何度も考えた線引きが、ようやく地域全体の言葉になった気がした。




