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第34話 救援契約を食い荒らす外注会社
外注会社の会議室は、港を見下ろせる高層階にあった。
窓の向こうでは夜の岸壁が静かに光っているのに、室内では数字の意味がまるで違っていた。人を運ぶ数ではなく、請求額の桁だけが大切にされている空気だ。
湾岸サプライリンクの常務は、資料を突きつけられてもまだ余裕のある笑みを崩さなかった。
「緊急便には追加コストがかかります。当然でしょう」
「当然の範囲を超えています」
姉崎が請求明細を開く。通常便扱いで積める解毒薬を、わざと第三搬路で止め、再発注扱いにして緊急料金を上乗せしていた。地域貢献便は、その穴埋めの建前にすぎない。
「救援契約を自分で遅らせて、自分で高く売り直していたんです」
私が言うと、常務はようやく笑みを消した。
「現場は綺麗事では回らない」
「現場は、あなたの綺麗じゃないやり方のせいで余計に回らなくなっていました」
片桐が机に手を置く。
「次に一便でも止めたら、救助班は正式に排除を求める」
常務は何か言い返そうとしたが、姉崎が先に告げた。
「契約停止の事前通知はもう出ています」
ようやく、相手の目から余裕が消えた。
夜を食い物にする仕組みは、だいたい昼の会議室で決まる。
だから私は、会議室に数字を持って行く。
それが一番効くと知ったからだ。




