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第31話 古い地図に残る第三搬路
古い地図は、たいてい埃をかぶっている。
でも埃をかぶっているからこそ、今使われている形跡があればすぐわかる。
東港の保守資料室で、私は昭和時代の連絡通路図を広げていた。片桐と姉崎、莉央も一緒だ。
「ありました」
図面の端に、小さく『第三搬路・非常時物資連結通路』とある。東港と雨港の間を結ぶ、今は閉鎖されたはずの保守用ルートだ。
「閉鎖年次は?」
「十五年前です。でも」
私は紙の上へ指を置く。【棚卸】の白文字が、図面の先にある現実の位置を示した。
冷却箱三台。
結界杭二箱。
未登録搬送台車一台。
「閉鎖されていません」
現地へ行くと、古い防潮扉の鍵だけが新しかった。扉を開けると、海風の混じる湿った通路がまっすぐ続いている。床には最近ついたタイヤ痕まで残っていた。
「使ってるね、これ」
莉央がカメラを構える。
「ええ。しかも応援便の量をこっちで抜いています」
第三搬路は、災害時のために作られた道だ。
その道が、今は災害より金のために使われている。
そう思うと、腹の奥が静かに冷えた。




