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第27話 片桐班長の休日連絡
休日という言葉は、夜勤にとって少し曖昧だ。
昼に寝て、夕方に起きて、端末の通知を確認しないよう努力する日。それを休日と呼ぶなら、その日、私はたしかに休みだった。
けれど夕方四時、片桐から珍しく私用回線へ連絡が入った。
『今、時間あるか』
文章は短い。いつもどおりだ。でも末尾に業務コードがついていない。
「どうしました」
『連絡橋の下で横倒しの冷却箱を見つけた。正式記録にない』
十分後、私はレインコートを羽織って岸壁へ向かっていた。
橋の下には、波しぶきをかぶった青い冷却箱が二台。雨港の備蓄番号が削られ、代わりに民間イベント会社の仮ラベルが貼られている。
「休日に呼び出す内容じゃないですね」
私が言うと、片桐は珍しく申し訳なさそうに目を伏せた。
「君にしか判断できないと思った」
その言い方はずるい。
私は箱に触れた。白文字が静かに浮く。
緊急応援便用冷却箱。
本来の搬送先・雨港北保管区。
「正式便から抜かれた箱です」
片桐が深く息を吐く。
「やっぱりか」
「でも、休日に呼ばれて嫌だったわけじゃありません」
思ったより素直な言葉が口から出て、自分で少し驚いた。
片桐はほんの少しだけ笑った。
「それならよかった」
海風は冷たかったのに、その一言だけ妙に温かく残った。




