25/40
第25話 消えた広域備蓄ラベル
ラベルは、箱そのものより雄弁なことがある。
どこから来て、どこへ向かい、誰の責任で動いたか。その小さな紙切れがないだけで、荷物はいくらでも『迷ったこと』にできる。
広域備蓄ラベルが一斉に消えたのは、見学会の翌朝だった。
姉崎から連絡を受け、私はすぐ雨港の事務室へ向かった。保管されたはずの予備ラベル台帳も抜かれている。
「機械の誤作動ですかね」
湾岸サプライリンクの担当が苦しい笑みで言う。
「紙の束も誤作動で消えるんですか」
私は事務室の床へ視線を落とした。白文字が、壁際のシュレッダー箱を指す。
使用済み裁断片・広域備蓄ラベル三十七枚。
「そこを開けてください」
箱をひっくり返すと、裁断されたラベルの断片が山のように出てきた。東港、雨港、共通備蓄、緊急救助便。必要な文字だけきれいに細切れになっている。
莉央が低くつぶやく。
「消す気、満々だね」
さらに【棚卸】を追うと、剥がされた新品ラベルの束が別室の鍵付き引き出しを示していた。
誰かが正式なラベルを消し、別の行き先へ貼り替えようとしている。
私は断片を一枚ずつ拾いながら思った。
隠したい人間は、いつも数字より紙を先に消す。
だから私は、紙も数字も両方残す。




