第20話 朝の入荷表はもう狂わない
東港夜間補給ハブが動き始めて、三週間。
朝六時の白板には、前夜の出庫、残数、次便の必要量がきれいに並んでいる。ずっと見たかった光景だった。
回復薬、魔力電池、結界杭、投光フレア。どれも足りないまま出していないし、余らせるためだけに積んでもいない。
「主任、今朝の入荷です」
塚本が台車を押してくる。《ラフギア》の三人は副業扱いで正式に夜間搬送補助へ入り、莉央は相変わらず地味な補給配信を淡々と続けている。視聴数は、驚くほど安定した。
『派手じゃないけど一番必要』
『夜の現場ってこうやって回ってるんだ』
コメント欄の空気も、最初よりずっと穏やかだ。
朝日が差し込む搬入口へ、片桐が紙袋を提げて現れた。
「朝飯」
「今日は缶コーヒーじゃないんですね」
「たまには温かいものを」
中には、湯気の立つ卵サンドが二つ入っていた。ひとつを受け取りながら、私は白板へ目をやる。
数字は静かに揃っている。
昔の私は、その数字が乱れるたびに、自分が悪いのだと思っていた。
でも違った。
足りないものを足りないと言って、必要な場所へ届くように動けばいい。それだけで、夜はちゃんと越えられる。
「片桐さん」
「なんだ」
「今夜も、補給線を一緒に見ますか」
彼はほんの少しだけ笑った。
「そのつもりで来た」
私は卵サンドをひと口かじり、白板の最終欄へ今日の日付を書き込む。
朝の入荷表は、もう狂わない。
そして私はもう、誰かの責任を被るために数を数えたりしない。
この夜を回すために、私の仕事を数えていく。




