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第14話 棚卸しできない嘘
【棚卸】は便利だ。
箱の数、ロット番号、移動した場所、隠された棚。触れればほとんどのズレが見える。
でも、人の保身や見栄そのものまでは見えない。
作戦室で伝票を並べながら、私はそのことを何度も考えていた。
「どうしました?」
姉崎が紙コップの湯気を持ってくる。
「能力があっても、結局、嘘をつく理由までは数えられないなって」
彼女は少しだけ笑った。
「理由が見えなくても、嘘は痕跡を残します。行政の仕事って、だいたいそこです」
莉央も白板にマーカーを走らせる。
「見栄で過剰搬出。保身で偽装返品。スポンサー向けで救助便を削る。理由は全部、ズレ方に出てるよ」
私は白板の線を見た。
救助便不足の日、スポンサー配信の日、返品処理が増えた日。点がようやく線になる。
数字は感情を語らない。
でも、感情で歪められた痕跡は、必ず数字に残る。
それなら十分だ。
私は白板の真ん中に大きく書いた。
『足りないものを、足りないまま出さない』
単純な原則が、いちばん強い。




