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第13話 元上司の買い戻し打診
その晩の帰り道、宮坂が補給センター裏の喫煙所で待っていた。
灰皿の前に立つ姿はいつもどおり整っているのに、額だけが妙に汗ばんでいる。
「大槻君。少し話そう」
「監査課を通してください」
「堅いことを言うな。君だって、ここまで大ごとにしたいわけじゃないだろう」
宮坂は封筒を差し出した。中には、倉庫主任への復帰辞令案と、年収の上積みが書かれている。
「戻ってこい。今回の件は、夜勤現場の管理不足として収める。君が前に出れば、視聴者も納得する」
要するに、また私に泥をかぶれということだ。
「復帰じゃありません」
私は封筒を返した。
「買い戻しです。使える人間を、静かに戻したいだけでしょう」
宮坂の目が細くなる。
「倉庫は表に立つ場所じゃない。君もそれはわかっていたはずだ」
「ええ。だからこそ、裏で何をしたかも全部見えます」
少し離れた場所で、莉央のカメラが赤い録画ランプをつけていた。片桐もいる。逃げ道はもうない。
宮坂はやっとそれに気づいたらしく、顔色を変えた。
「はかったな」
「測っただけです」
私が答えると、彼は舌打ちして去っていった。
背中を見送りながら、不思議と手は震えなかった。
もう私は、この人の言葉で自分の価値を測らない。




