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第15話 最下層スタンピードの補給線

事件は、監査結果が出る前に起きた。


 最下層手前で小規模な魔獣群が暴走し、探索者と作業員あわせて二十人以上が退避できなくなったのだ。しかも誰かが搬入口西シャッターの優先制御をいじっていて、補給車両が一本しか入れない。


「大槻主任、残量は」


 片桐の声に、私は床へ片手をついた。


 白文字が一斉に立ち上がる。


 回復薬残二十六。魔力電池残九。投光フレア残十四。簡易食糧残十一。隠し通路経由なら搬送時間は通常の三分の二。


「正面は詰まります。旧換気通路の保管庫を中継点にして、物資を分割してください」


 私は矢継ぎ早に指示を飛ばした。塚本がフォークリフトを回し、《ラフギア》の三人が自主的に運搬を手伝う。莉央は配信で視聴者に余計な煽りを入れず、必要な残数だけを読み上げた。


『残り電池九本。無駄な点灯を止めてください』

『回復薬は中層退避組を優先。軽傷者は簡易パックへ』


 地味だ。でも、地味な判断の積み重ねでしか補給線は持たない。


 最下層から「照明が切れる」という連絡が入った瞬間、私はすぐ別ルートの予備電池三本を見つけた。昼勤が放置した旧型ロッカーの底に、未登録のまま残っていた分だ。


 片桐が通信越しに短く言う。


『助かる』


 その一言で、喉の奥に押し込めていた緊張が少しだけ緩む。


 夜明け前、全員が地上へ戻ったとき、搬入口の床は空箱だらけだった。


 でも、欠品は一つも出していない。


 私は初めて、自分の仕事で最前線を守り切った手応えを持った。


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