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義務婚の国で、君を想う  作者: カムロ
第2章 運命を決めるルーレット
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第80話 ― 止める側へ

モニターの光だけが、暗い解析室を照らしている。


ユウトは椅子に深く腰を預け、並べられた発光ログを見つめていた。


仮に――

レゾナの技術が使われているとしたら。


問題はそこではない。


どこで、どうやって、その技術に辿り着いたのか。


レゾナは発表こそしているが、まだ正式販売前だ。

内部仕様の詳細は、ごく限られた人間しか知らない。


(……内部か)


そうとしか考えられなかった。


もし情報が流出しているなら、ライオネル社にとって致命傷になる。


意中の相手との発光が「誤作動」として処理されている現段階なら、まだ間に合う。

だが件数が増えれば――


それは偶発ではなく、意図的操作だと世間に知られる。


そのとき、世間は何を疑うか。


制度か。

それとも技術を提供している企業か。


ユウトはログを拡大する。


魔力波形の立ち上がり。

共鳴曲線の安定度。


自然発生の発光はもっと荒い。

感情の揺らぎが混ざり、乱れが出る。


だがこの波形は、あまりに整っている。


揺らぎを抑え、共鳴効率を引き上げる設計。


(……安定させている)


レゾナは本来、暴走を防ぐための構造だ。

不安定な魔力を“支える”ための思想。


だがその技術を逆に使えば。


安定していない魔力同士を、強制的に接続することも理論上は可能になる。


ユウトは目を閉じた。


(止めなければならない)


怒りに近い感情が、胸の奥で静かに灯る。


技術は、人に寄り添うためのものだ。


それが、制度を揺らす道具として使われるなら。


自分は傍観できない。


ユウトはマギボードを取り出した。


レオン・ヴァレンタイン。


発信。


コールが鳴る。


数回目で、繋がった。


「……ユウト君」


落ち着いた声。


「そろそろ連絡が来る頃だと思っていたよ」


ユウトは一瞬、言葉を失う。


「……やはり、ご存知でしたか」


「何か見えたかい?」


「おそらく、レゾナと同じ思想が使われています」


間を置かずに言った。


「不安定な魔力を補正し、共鳴を強制的に成立させている可能性が高い」


「意中の相手との発光は偶然ではない。操作されている」


沈黙が落ちる。


マギボード越しでも分かる。


レオンは、考えている。


やがて、小さく息を吐いた。


「……やはり、君もそう感じたか」


否定はなかった。


「レゾナの構造は、まだ外部に完全公開していない」


「だが、可能性はゼロではない」


「内部から流れたと?」


「その線が濃いかと」


はっきりと告げる。


「このまま事実が明るみに出れば、ライオネル社は責任を問われます」


レオンは低く笑った。


だがその笑いに軽さはない。


「ハワードさんが君を評価していた理由が分かる」


先代CEOの名が出たことに、ユウトはわずかに驚いた。


「私はただ、教えられた通りに考えただけです」


「それができる者は多くない」


短い沈黙のあと、レオンは言った。


「内通者がいるかどうか、裏を取ろう」


「そして、発光を制御している本体を突き止める」


声の温度が、わずかに変わる。


「そのために、君の知識が必要だ」


ユウトは息を吸う。


これは単なる技術検証ではない。


立場を選ぶ行為だ。


「……やります」


即答だった。


「俺の技術が、歪んで使われているなら」


「正しい場所に戻します」


通話が切れる。


静かな解析室。


モニターには、整いすぎた波形が並んでいる。


ユウトはゆっくりと椅子から立ち上がった。


疑念は、確信に変わった。


そして自分はもう中立ではない。


王都の夜景が窓の向こうで整然と輝いている。


秩序は、まだ保たれている。


だがその内部で、確実に何かが動いている。


ユウトは小さく呟いた。


「……止める」


誰に向けた言葉でもない。


だが、その決意は揺らがなかった。

読んでいただき、ありがとうございました。

感想やご意見などありましたら、とても励みになります。

続きもお読みいただけたら嬉しいです。

毎日12時に更新しています。

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