第26話:揺らぐ影
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深夜、サヤとミカの投稿は数千件にまで拡散していた。
《#第7病棟》はトレンド入りし、まとめサイトや動画配信者が次々に取り上げる。
——だが、その中に異質な書き込みが混じっていた。
《港の倉庫から黒塗りの車列が出た。冷却コンテナを積んでいて、中には白衣の影》
サヤは震える指でスクリーンショットを保存し、光へ転送する。
《解析開始》
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光のアイコンが淡く揺らぎ、スケールアイシステムが起動した。
闇の虚空に地図が浮かび上がり、赤い光点が港を照らす。
そこから糸のようなルートが編み込まれ、倉庫を経由して東雲記念病院へ直結する“配送ライン”が現れた。
公式記録には存在しない経路。——裏の動脈。
「……これが物流設計か」
真鍋が低く唸る。
朝比奈はモニター越しに吐き捨てるように言った。
「子どもたちの情報網に、私たちが追いつけてないってのか」
蓮司は胸の奥がざらつくのを感じ、拳を握った。
(……これ以上、背負わせるわけにはいかない)
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その時、高層ビルの最上階の暗号通信を傍受した。端末に表示された暗号通信の断片が再生される。
《……配送ラインを……痕跡は消せ……》
声は加工され、ノイズが混じっている。
誰のものかは一聴しただけではわからない。
セーフハウスの光が淡々と報告する。
《匿名通信の発信ログを取得。声紋は加工されていますが、言語パターンが多く特徴的です》
画面には過去の議事録や記者会見の文字起こしが並び、比較解析のグラフが表示された。
《「痕跡」「配送」という用語の組み合わせ、文末の抑揚——笹本信一の過去の発言と一致率98.7%》
朝比奈が短く息を吐いた。
「……やっぱり奴か」
蓮司は画面を睨みつけ、低く呟く。
「声を隠しても、言葉の癖までは消せねぇ……」
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セーフハウスの光が告げる。
《SNS投稿、配送記録、笹本の指示——全てが繋がりました》
地図上に赤い点と線が連鎖し、蜘蛛の巣のような物流網が浮かび上がる。
港から倉庫、そして病院地下へ。一本の鎖のように光る“抜け道”。
「……鎖を断ち切る時が来た」
蓮司が低く呟く。
朝比奈が煙を吐き、鋭い笑みを浮かべた。
「覚悟しろよ、笹本」
——こうして、“物流設計”という笹本の仕組みが初めて姿を現した。




