3-8 絶命へのカウントダウン
どれくらい時間が経っただろうか。
おそらく十分も経っていないだろう。
しかし体感ではもう何時間も経っているような感覚に襲われていた。
地面には絶命したキウルが数頭横たわり、辺り一面所々が鮮血で汚れていた。
俺の身体も血で汚れているが、それはキウルを切ったことによる返り血だけではない。
複数頭からの攻撃を全て捌き切れるはずもなく、時折奴らの鋭い爪は俺の肌を切り裂き、そこから血が止まることなく流れ続けていた。
ちくしょう、身体中が熱い。
煮えたぎった熱湯が血管を通っているようだ。
痛みは不思議と感じなかった。
アドレナリンが脳を支配してるからだろうか。
どうであれ、好都合だった。
「クソっ!何頭いるんだよこいつら!」
すでに五頭は倒したはずだが、その度に茂みからキウルの増援が出てくる。わかってはいたが、このままじゃジリ貧だ。
ちらと後ろを見る。
大木のうろに入ったベルが心配そうな表情でこちらを見ている。
俺が倒れたら、間違いなくこの子もキウルに食い散らかされるだろう。
そうはさせねえ。
きっともうすぐ応援も来る。
もうすぐ……
「!?……ッグ!」
また一頭、キウルが飛びかかってきた。
俺の喉元を狙って噛み付こうとした顎を剣で防ぐ。
しかし、ドーベルマンほどの体躯を持つ獣に飛びかかられた時の衝撃はかなり大きい。
思わず態勢を崩す。
そこにもう一頭、別のキウルが横合いから飛び出してくる。
それに気づけなかった俺はとっさに腕で庇う。
キウルの顎は恐ろしい力で俺の腕に噛み付く。
「グッぅああああ!!」
ミシミシと骨が軋む音が聞こえる。
このままでは間違いなく噛み砕かれる!
「こんの、犬畜生がぁぁぁ!」
腕に噛み付いたキウルを、そのまま岩に叩きつける。
キウルは頭が粉砕され脳漿を散らしながら絶命したが、同時に俺の腕も使い物にならなくなった。
完全に折れている。
凄まじい痛みが脳に危険信号を送る。
まずい、気絶だろうが何だろうが意識を失えば死と同義だ。
まだ利き腕が、剣を握れる腕が残っている。
まだいける……!
しかし、態勢を立て直そうと立ち上がったところで視界がボヤけていることに気づいた。
さっきまで熱かった身体が、信じられないほど冷たくなってきている。
寒い、痛い。
ここが限界なのか?
もはや剣を支えに立っているのがやっとだっだ。
「にいちゃん!」
ああ、心配すんなって。
倒れたりしねえよ。
ただ、どうにも喋る気にはならないから返事はできねーけどな。
さあ来いよ犬畜生ども。
やれるもんならやってみろ。
俺は絶対倒れねーぞ!
四匹のキウルが俺めがけて飛びかかろうとしている。ケリをつけるつもりだろう。
剣を振るおうとしたが、どうやっても身体が動かなかった。
……ああ、どうして俺はこんなに弱いんだ。
俺の意識はそこで途切れた。




