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NPC村長、逃げた理由が正しすぎる
第5話です。廃村には廃村の理由があります。
村長は森の小屋に隠れていた。
白いひげのNPCは、湊を見るなり毛布をかぶった。
「わしはもう村長ではない。あの村は無理じゃ」
「無理だった理由を聞きに来ました」
湊が帳簿を出すと、村長は毛布から目だけを出した。
「勇者祭りじゃ」
「祭り」
「毎月やっておった。人を呼ぶために花火を上げ、屋台を出し、記念像を建てた。だが客は来ん。借金だけが残った」
請求書の花火代はそれだった。湊は納得した。売上のない広告費は、ただの穴だ。
「戻ってください。祭りはやめます」
「では何をする」
「朝市です。毎朝、小さく売る。毎日、現金を作る」
村長は黙った。派手な祭りより地味な朝市。それは村長の夢とは違ったのだろう。
「村の名前は残せます」
湊は言った。
「ただし、黒字で」
村長は長い沈黙のあと、古い鍵束を渡した。
「役場の金庫じゃ。中身はないが、書類はある」
「書類があれば十分です」
帰り道、妖精が小声で言った。
「村長さん、戻ってくれますか」
「戻るよ。逃げた人は、戻る理由が欲しいだけだから」
翌朝の朝市に、村長は一番古いエプロンをつけて立っていた。
ここまで毎日更新分です。次週は朝市編から継続し、別連載への橋も作れます。




