復興祭当日、運営監査が村に来る
復興祭の朝、セリカ村の空に黒い窓が開いた。
『緊急運営監査を開始します』
祭りの屋台が一斉に止まった。薬草茶の湯気、焼き芋の匂い、荷車の舞台。全部が、巨大な通知窓の下で小さく見える。
リュウが剣を抜きかけた。
「運営と戦うんですか」
「戦わない。提出する」
湊は役場の机に、三日分の収支表を並べた。
薬草茶の売上。
鍬の予約金。
復興会員費。
補給契約の前払い。
競売中止で空欄になったログアウト権収益。
妖精ナビが震える声で言う。
「湊さん、監査対象は村ではなく、プレイヤー行動です」
「なら、なおさら帳簿を見せる」
空から運営アバターが降りてきた。銀色の仮面をつけた、人の形をした警告文。
『セリカ廃村の復興速度は想定外です。イベントバランスを損ねています』
「損ねているのは、イベントではなく設計です」
湊は一枚目を差し出した。
「販売上限をかけたから、支援者は会員費に回った。買収を断ったから、補給契約になった。ログアウト権を競売に出したから、プレイヤーは現実へ帰る権利に値段を付けられた」
仮面の奥が、かすかに揺れた。
「村はルールを破っていません。ルールの抜け穴に、人が集まっただけです」
広場のプレイヤーたちが黙って聞いている。
リュウが、小さく呟いた。
「それ、格好いいこと言ってるんですか」
「ただの監査対応」
湊は最後の紙を出した。
『ログアウト権競売収益の計上先について』
「この空欄を埋めてください。運営さん」
復興祭の太鼓が、一拍だけ遅れて鳴った。
その音は、ゲームの効果音ではなく、村人が手で叩いた音だった。
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