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最後に行きたかったライブ

ライブハウスの前には、長い列ができていた。


制服の男は、壁にもたれている。


「……何で俺が」


隣で、若い女がきらきらした目で入口を見ている。


もちろん、生きていない。


「最後に行きたかったんだもん」


笑う。


「推しのライブ」


制服の男はため息をつく。


「死んでまで行くもんかよ」



ライブが終わる。


観客が満足そうに出てくる中、女は静かだった。


「……あれ?」


制服の男が歩き出す。


「もういいのか」


「うん」


少し考えてから言う。


「ライブ、楽しかったけど」


沈黙。


「本当は」


言葉を探す。


「彼氏と来る約束してたんだよね」


足を止める。


「喧嘩してさ」

「結局、一人で来る途中で事故って」


苦笑いする。


「推しより」

「あいつと来たかったのかも」


制服の男は何も言わない。



帰り道。


夜風が吹く。


女の姿が、少しずつ薄れていく。


「……でもさ」


笑う。


「デートできたみたいで楽しかった」


制服の男を見る。


「ありがとう」


姿が消える。


男はポケットに手を入れる。


「……もう喧嘩すんなよ」


誰にともなく呟く。


夜は、静かだった。


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