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呼び捨てなんて出来ません

 青騎士寮に戻った私を待っていたのは、マリウスさんの熱い包容だった。

 寝不足なのか、うっすら隈が出来てしまっている。

 隊長さんやアナベルさんも駆け付けてくれた。

 やっぱり皆に心配かけてしまった。咄嗟にとった行動で、皆に迷惑をかけてしまった事に、今更ながら罪悪感に襲われた。


 神獣という立場がそうさせるのか、これだけ心配かけたのにも関わらず怒られるという事がないのも、私の罪悪感を膨らませる要因になっていた。

 決して怒られたいわけではないけれども。

 

 私の無事を確認した後、アナベルさんは何か言いたそうにしながらも仕事に戻っていった。


 私たちは初日に訪れた隊長さんの執務室にこもった。


「ラルちゃん、人型をとれますか?」

「ラル? 名づけは出来ない筈だろう?」

「いくつか候補を出してご本人に決めてもらった愛称ですよ。人目のある所で神獣様とは呼べませんからね」

「別にそんな事ないだろう? 神獣を愛称で呼ぶなど聞いた事ないぞ」

「呼ばない、とも聞いた事ありませんがね」

「……まぁそうだな。とりあえず、お前はラルなんだな?」

「きゃん!」


 人型になると、全裸ではなくイルミールに着せてもらった、シーツ……じゃなくてローブ姿だった。うんうん。着実に成長してますね、私。自画自賛。


「マリューすさん、むだんがいはくして、ごめんなさい!」

「ラルちゃん……」


 ぎゅむっと抱きしめられる。力強い抱擁は、細身であってもやはり男性のものだ。


「ぐぇ」


 この苦しさは罰なのですね。


「本当に心配しました。マルチャン副神官長は要領を得ないし、殿下は静かにお怒りだし気が気じゃありませんでしたよ」

「……マリウス、離してやれ」

「……はっ! ラルちゃん、大丈夫ですか!? ちょっと力を入れすぎたようです」

「だ、だいじょぶ。でんか、おこってたの?」

「ええ。副神官長にね」

「神獣を餌付けしようとしたんだ。そりゃ怒るだろう」


 餌付け、ね。確かにあの生肉を鼻先に押し付けられたのは、いい気分じゃなかったけど。問題はそれだけじゃなさそうだ。


「ところでラルちゃん、どこにいたの?」


 そうでした。何も言わずにいなくなったから、ちゃんとお話ししなきゃね。


「えっと、にわにいったら、まるチャンふくしんかんちょうがいて、なまにくをおしつけられてたら、でんかがとおって助けてくれたの。それで、でんかみたらビックリして、イルミールのとこにいって、まりょくのくんれんしてた」


 うぅ……。起こった事を論理的に話すのって難しい。

 念話だとそんな事はないんだけど、きっとこの国の言葉が日本語より難しいって事かな。うん。そういう事にしとこう。


「つまり、生命の湖まで行ってたのか?」

「うん!」

「驚いたな。転移の魔法を使えるのか」

「でも、すごくつかれるの」

「そりゃそうだろう。転移の魔法は高名な魔術師たちが魔法陣を囲んで、数時間詠唱してやっと人一人を移動させる事が出来ると言われてる」


 そんなに大変な事なんだ。デミさんに感謝しましょう。


「さすがラルちゃんですね。でも、今度から何かあったら私たちを頼ってください。大精霊様にはかないませんが、神官相手なら少しは役に立てますよ。うちの隊長が」

「俺かよ」

「ふふ。ありがとうございます。マリュースさん」


 マリウスさんのお膝だっこでソファに座る。あの、1人で座れますよ? 


「それはそうと、ラル」

「はい?」

「お前、大精霊様を呼び捨てにするなら、俺たちにもそうしろよ」

「へ?」

「あ、そうですよね! さすがに大精霊様を呼び捨てされるような立場の方に、敬称をつけられるのはちょっと……」

「まぁ、俺たちも本当なら神獣様とでも呼ばなきゃならんのだがなぁ……」

「それはいやでしゅ……」

「ならほら、カルロスだ。言ってみろ」

「う……カルリョス……隊長」

「カルロスだ」

「か、カリュりょ……」


 敬称以前の問題でした。


 敬称云々ってそんなに大事ですかねぇ?

 まぁ日本語だと目上の人にはさんづけするのは普通だけど、英語圏には丁寧な言い回しはあっても敬語がないし、敬称略ってのは普通なのかな?

 うぅ……でもなぁ。

 確かにね、前世からの年齢を全て足せば、余裕でお二人の年齢を越すと思いますけどね。今の私は神獣とはいえ四歳児程度の犬耳&尻尾付きの不審者ですよ?

 いいのかなぁ?


「あまり考えすぎるな。今度から敬称をつけたら、晩飯の肉を一つ減らす事にしよう」

「ひどい!」

「つけなきゃいいだけの話しだろうが。そもそも、大精霊様と仲睦まじくしておいて、俺たちとはダメなんて悲しくなるなぁ。神獣ってのは冷たい生き物なんだなぁ」


 見事な棒読みでカルロス隊長がぼやく。


「本当に……少しは仲良くしていただけていると思っていたのに、寂しい限りですね、隊長」


 マリウスさんまで……!


「ふたりとも、だいすきよ!」

「だったら、呼べるよな?」

「呼べますよね?」

「……ぁう……うぅ」


 四つの目に射抜かれる。これはもう腹をくくるしかなさそうです! 夕飯のお肉の為にも! 私がお二人に懐いているのを示す為にも!


「か、カリュロシュ……? マリュース?」

「「ぶふっ」」

「!!」


 ひ、ひどい……!

 頑張ったのに!


 折衷案として、カルロス隊長はカール、マリウスさんはマリ、という愛称で呼ぶ事に落ち着きました。



 

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