表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

ラルって呼んで

 さぁ、早速お買い物です!

 エルネストさんが作ってくれたローブを着て、颯爽と街へ繰り出します!


 と、その前に。


「マリュースさん、あのね」

「どうしました?」


 言いづらそうにモジモジする私の目線に合わせしゃがんでくれたマリウスさんの耳に、内緒話をするように手をかざす。


「あのね、ラルってよんで」

「ラルちゃん? 可愛らしいですね」

「えへへ」


 真名を貰うまでの、ニックネーム。

 色々考えてたけど、虹という意味ってところに惹かれて、ラルって呼んで貰う事にしました。


 これからは、犬っころのチビちゃん改め、狼型神獣のラルです!



 街は大勢の人々で、喧騒と言っていいほどの賑わいを見せていた。フードを目深にかぶりマリウスさんと手を繋いで歩く。

 

 キョロキョロ道行く人々を見てみると、ほとんどの人が普通の人間に見える。エルフとか獣人とかいないのかなぁ? あわよくばフード外して歩けるかもって思ったけど、獣人が珍しいなら被っておかなくちゃ。


 それにつけても、目に付くのはやっぱりいい香りを漂わせている屋台!

 お肉の串焼き!

 お肉のサンドイッチ!

 スイーツは別に興味ない。

 イメージ的に何か高そうだし。


 お肉の匂いに吸い寄せられそうになるけど、まず今日の目的は下着です!

 尻尾の穴があいた下着なんてあるの? そこはエルネストさんが何とかしてくれるそうです。

 甘えっぱなしで申し訳ない。よろしくお願いします。


 子供服専門のお店なんてないらしいから、マリウスさん御用達の仕立て屋さんで下着を三枚と、ちょっと大きめのシャツとズボンを選ぶ。お店のお姉さんが親切にもオススメを選んでくれた。赤毛で緑の瞳の、おっとりした感じの良いお嬢さんです。


 お金を払う段階になって、漸く私は自分の失敗に気づいた。

 薬草売りに行ってないからお金がない!


「マリュースさん、おかね……」

「子供はそんなこと気にしなくていいんですよ」

「でも、みためは子どもだけど、しんじゅうだから子どもじゃないよ」


 今までの神獣がどうだったかは知りませんが。

 私は前世の記憶がちょっとあるから、多分普通の子供じゃないのに。


「ラルちゃん、いい大人が子供にお金を出させるなんて出来ませんよ」


 うぅん。困ったなぁ。

 八の字眉になってるであろう顔でマリウスさんを見上げる。

 マリウスさんは、にっこり優しい顔で私の耳に手をかざすと、少し声をおとして続けた。


「それに、騎士は意外と高給取りなんです」


 ウィンクいただきましたぁ! いたずらっぽい笑顔にウィンクは反則です! お店のお姉さん、お顔がゆで蛸状態です!

 私も同じような色になっていることでしょう。


 お顔が真っ赤なお姉さんから商品をつめた袋を受け取ると、私たちはまた街を歩いた。初めてのお買い物、ミッションクリア!

 で、いいのかな?

 


 そして街をブラブラしていると、やっぱりお肉が気になってくる。それに、やっぱりお肉は…じゃなくて、初めてのおつかいは自分の稼ぎで賄ってこそ!


「マリュースさん、やくそう売りたいです!」

「うぅん。でしたら神殿に行かないといけないのですが……」

「しんでん? なんででしか?」


 神殿って、あんまりいいイメージないんですよ……。


「冒険者ギルドで売るにはちょっと面倒なんですよ。まずギルドに登録しないといけないのですが、冒険者ギルドは十二歳にならないと登録出来ませんし、私は青騎士ですから登録出来ません。その点、神殿であればすぐに買い取って貰えるんです」

「ギルドとしんでんのほかに、かいとってくれるところはないでしか?」

「そうですねぇ……エルネストに買い取らせますか?」

「あぅ、それはダメでし。これ以上ごめいわくはかけられましぇん」


 手詰まりだぁ。こうして悩んでる間にも、素直な体はフラフラとお肉の屋台に吸い寄せられる……。

 マリウスさんも分かってくれてるのか、特に何も言う事なく私に手を引かれるまま歩いてくれる。


「ラルちゃん、そんなに急がなくてもお肉は逃げませんよ」


 チクッと注意は忘れない。

 

「嬢ちゃん、そんなに腹が減ってるのか? パピィに買ってもらいな! うちの串焼きは旨いぞぉ!」


 いかつい屋台のおじさんです。パピィって子犬? なんで!? フード被ってるのに!

 思わず両手でガバッとフードを抑えた。良かった脱げてない。


「どうした嬢ちゃん。ん? ボウズか?」


 どっちでもないというか、どっちでもあるというか。


「おにく、いくらでしか?」

「銅貨二枚と小銅貨五枚だ。だが嬢ちゃん可愛いからな、特別に銅貨二枚に負けといてやるぜ?」

「ほんと?」

「おう! パピィがいいって言ったらな!」

「いいですよ。二本貰いましょうか。銅貨四枚でいいんですよね?」


 ちゃっかり負けてもらった値段の倍の値段で交渉するマリウスさん。なるほど、お買い物ってこういう駆け引きが大事なのね。

 そしてパピィはお父さんて意味かな? 何か可愛い。


「あちゃあ、こりゃやられたな! まぁいい、熱いから気を付けて食えよ」

「冗談ですよ、一本はちゃんと払います。子供の教育上、きちんとした所を見せないとね」

「ははっ。若いのにしっかりした父さんだな」

「どうも」


 熱々の串焼きお肉を買ってもらった!

 私、マリウスお父さんに教育されてます。マリウスさんはどっちかというと、お母さんキャラなんだけどなぁ。

 

「ラルちゃん、気を付けて」

「はい! おじしゃん、ありがとう!」

「おう! また寄ってくれよ」


 てりてり光る分厚く切ったお肉から立ち上る香りが、食欲をそそります。私の満腹中枢、どうなってるんだろう?


 ちょっとお行儀は悪いけど、豪快にかぶりついたお肉は、期待通り肉肉しい食感で、大蒜がきいたスパイスがお肉の旨味を引き立てて絶妙にマッチしていた。


 はっ!!


 またマリウスさんに、お金出させてしまいました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ