第十二話
「で、ほんとーにここなの?」
ウィルはクロスに静かに問いかける。
クロスは無言で頷く。
「ふーん……」
ウィルは座り込み、道を調べ始めた。
「あの……何してるんですか?」
「ねぇ、クロス。あたしのこと怖い?」
クロスの問いかけに答えず、ウィルが聞く。
一瞬、何を聞かれているのか分からなかった。
「何故……ですか?」
「んー、だって、クロスさ、あたしには敬語じゃん」
そう言いながらもウィルは何かを探しているようだった。
クロスは驚いた。自分が無意識のうちに敬語を使っていたことに。
「あの、怖いとかじゃなくて……年上は敬った方がいいのかと……」
クロスは言葉に詰まりながらも言いきった。
ヴェガはそれを聞いて、少し複雑な気持ちになっていたのだが、誰も気に留めなかった。
「あー、そんなのいいよ。見た目は10才位の可愛い少女なんだし」
「ですが……長く、生きてるのでは……?」
「そんなことはない」
ヴェガが口をはさんだ。
「せいぜい、人生は30年ちょっとだ」
「えー、そうかなぁ? あんた、いくつになったのよ?」
ウィルが膨れてヴェガに聞く。
「私はもう、28ですよ」
「えー、そんなになったの? あんたは昔からほんと、変わんないわねー」
まるで、不老不死みたい。
「じゃ、あたしは33才かー」
ウィルは遠い昔を懐かしむように呟いた。
「ウィルとヴェガってそんな昔からの付き合いのなのか?」
クロスが聞くとウィルはくすくす笑いだす。
「そーよ。ま、28年の付き合いになるわね」
「違いますよ、10才前後は会ってませんから、26年ぐらいでしょう? ウィル」
ヴェガがそう言うと、ウィルは立ち上がり、ヴェガのすねに回し蹴り。
「もー、仕事時間じゃないのよ、ヴェガ」
「そうだったんですか……」
ヴェガは足をさすりながら呟く。
「さぁ! 謝りなさいっ! 昔、教えてあげたでしょ!?」
ウィルのキャラ崩壊が凄まじいな、と思いながらクロスは黙って見ている。
手や口を出したら、こっちまで被害がありそうだ。
ヴェガは小さくため息をつき、ウィルの目線に合わせる。
「すみませんでした……」
ウィルはむっ、とする。
「続きは? ちゃんと最後までしないとねぇ……」
ウィルはなんだか楽しそうだ。
ヴェガの表情はだんだんしぶくなる。
「……すみませんでした、姉さん」
「よーし、よくできたねぇ、ヴェガー」
ウィルはウェガの頭をよしよし、となでる。
「ね、クロス。分かったでしょ?」
「……兄弟だったんだ……」
その割には随分似てないな、と思う。
まるで、光と影の様だ。
「そー、これからもヴェガをよろしくね」
ウィルはそう言うと、一瞬だけ笑う。
次の瞬間、金属音が響いた。
「やっと現れたのね」
ウィルの手にはナイフが3本握られていた。
そして、いつの間にかあの少年が目の前に立っている。
「ああ。お主の名は?」
「あたしは、ウィルフィリア=ヴェット。あんたは?」
「拙者の名は、リョウ=サザナギ。反逆者、ウィルフィリア。拙者が成敗いたす!」
リョウ、と名乗った少年は南の方で使われている、刀、という武器を振る。
見た目はウィルよりも上だが、おそらくウィルの方が生きているのだろう。
「まさか、まだボスがあたしのこと探してたとはねー……」
「あたり前であろう。お主の能力は珍しく、強力だ。野放しになっているぐらいなら、
消してしまった方が己の身の安全だろう」
「へー。じゃ、ボスはまだ、あたしのことも戻したいんだ」
ウィルはなんだか楽しそうだ。
それに対し、リョウはウィルに追いつき、刀を振るうのに精一杯の様だ。
「で、リョウは何の能力なの?」
その瞬間、ウィルの身体は地面に張り付いた。
「重力操作? それとも、過重力?」
少しもあわてること無く、ウィルは聞く。
リョウは黙ってウィルに近づく。
「えー、教えてくんないの?」
ウィルはそう言うと立ち上がった。
「な、何故……」
「教えないよ」
ウィルはそう言うと、リョウにナイフを突き刺した。
この小説の方向性を見失いつつある……。




