第十一話
「……邪魔だった?」
クロスが壁に追い詰められていた姿を見て彼女はそう言った。
「いいえ。それより待ってましたよ、ウィル」
「ったく……いきなり呼ぶから姫に何かあったのかと思ったじゃん」
少女――ウィル、は大きなカバンを引きずるようにしながら中に入ってきた。
そして、ヴェガを押しのけて、クロスの手を掴む。
そして、巻いたばかりの布を解いていく。
「ああ、これは……」
「知っているのです?ウィル?」
ウィルは頷く。
「南の方で栽培されてる薬物の一種だよ。まず北では見ないね」
「それは……何に使うんです……?」
クロスは恐る恐る尋ねる。
「戦争の道具を作るんだよ」
ウィルは淡々と言う。
「触れれば、その身を焼きつくし。取り込めば、痛みと苦しみを忘れてしまう」
クロスは彼、のことが気にかかった。
彼は、あの果実について知っているはずだ。
だが、彼はあれを素手で触っていた。
「そして、無限の命を手に入れる代物、って数十年前は言われてたけど、
結局は不老不死なんてありえないのよ」
「随分詳しいのですね……」
「当たり前でしょー、あたしは医者だよー?」
ウィルはにっこり微笑む。
そうしている間にも、クロスの治療は続けられる。
「って、言えたらよかったんだけどね」
「え?」
「随分簡単に言ってしまうんですね、ウィル」
ヴェガは溜め息交じりに呟く。
「ま、良いじゃん」
「あの、何の事だか……」
ウィルはにっこり、微笑む。
「あたし、食べたもん。ま、不老不死?」
「…………」
信じられない。
不老不死、なんて魔法があったとしても叶わない。
「あ、信じてないでしょ? 証拠、見せたげる!」
そう言うと、右目をこする。
すると、色のついた薄い硝子の様なものが取れた。
左目は透き通るような青。そして、右目は――
「赤い……」
「そ、右目がみーんな赤くなるの」
「まさかっ……」
街であったあの少年。
「どうかしたの?」
「俺、街であった。多分、不老不死――」
「どこで」
ウィルの表情がわずかに変わった。
口調は鋭い。
「え、あぁ……」
特別あの少年に思い入れがあるわけではないが、何か悪い予感がして口を閉ざす。
「じゃ、そこに連れてきなさい」
そうして、クロスはウィルに手を引かれ連れ出された。
「ヴェガ、あんたもだよっ!」
「はぁ……」
ヴェガも仕方なく二人の後を追った。




