第十話
この前の逃走中も面白かったですね~……って、関係無いですけど。
そのうち、オリキャラ等々を混ぜて書きたいなぁ、とは思ってますが。
「ほらよ」
シェーラの部屋に入り、クロスは買ってきたそれを軽く投げた。
「ふぇ!?」
いきなり投げられたので、シェーラは受け取れずに床に落とす。
「あ、ごめん……」
シェーラは急いで拾い上げ、袋を開ける。
そして、嬉しそうに微笑み、袋の中の一つを口に入れた。
「美味しい……ありがと、クロ」
「って、俺は買ってきただけだけどな」
しかし、シェーラは首を横に振る。
「クロが美味しい、って思えるものを食べられるのが嬉しいの」
クロスはドキリ、とする。
シェーラの食べているそれが何なのかすら分からない。
「あ、ああ……そうか」
そう言った瞬間、右手に鋭い痛みが走った。
苦痛にクロスは一瞬顔をゆがませる。
「どうしたの?」
心配そうにシェーラがクロスの顔を見つめる。
「何がだ?」
シェーラに心配かけるわけにはいかない。クロスはそれだけだった。
クロスにそう言われたシェーラは、何も言えない。
何が、と聞かれたら、あれは見間違いだったのだと思うしかない。
「じゃ、俺はもう部屋に戻るぞ」
「うん、ありがと」
シェーラは笑いながら、言いお菓子を食べた。
「――っ……」
クロスはシェーラの部屋を出て、壁に左手をつきなんとか体を支える。
そして、自分の部屋に向かって体を引きずるように歩き始めた。
右手だけでなく痛みは広がって、右半身が熱を持っているようだった。
「無様な姿ですね」
頭上から声がし、顔を上げるが目の前には誰もいない。
確かに、あいつ……ウェガの声がしたはずなのだが……それすらも幻聴だというのか?
「こっちですよ」
さらに上から声がする。クロスは恐る恐る顔を上げた。
すると、天井に穴が空いていて、そこからヴェガが顔をのぞかせていた。
「何をしているのです。クロス」
クロスは何でもないように右手を隠す。
「なんでもねぇ――」
「見せなさい」
ヴェガはクロスの隣に降りて、右手首を掴む。そして、無理やり手を開いた。
クロスの右掌は赤くなっていて、特に中心部分が酷く膿んでいた。
「一体これは何ですか」
「しらねぇよ」
「では、来てください」
無理やりクロスは手を引かれ、廊下を進む。
そして、一つの部屋に入れられた。その部屋はシンプルな作りの書斎の様だ。
あるのは一つの窓に黒いデスク、それに大量の本だけだった。
「なんだよ、ここ……」
「私の部屋です。いいからそこに座りなさい」
クロスはしぶしぶ座る。ヴェガはほんだなをガチャガチャあさる。
折角、綺麗に整頓されていた棚がめちゃくちゃだ。
ヴェガは漁り、かき集めながら電話をかける。
「ああ、今すぐ来れるか……。頼む」
手短に話し、クロスの座る椅子の前に来て跪く。
無理やり、手を掴み掌に黒い液体を染み込ませた布を巻いていく。
「――っ!」
「いいから黙っていろ。何でそうなったのか分からないから一応万能薬を塗っておいた」
ヴェガは手際よくクロスの右手に布を巻いていった。
「……手際、良いな」
「当たり前だ。私はお嬢様の保護者の様なものだ。いざというときこれぐらい出来なくてどうする」
ヴェガは顔も上げずに答えた。
なぜか、クロスにはそう言うヴェガの口調がさびしく聞こえた。
「なんか、お前って……」
クロスは一度言葉を切って反応を見るが、ヴェガは何も言わない。
「俺にだけ冷たいよな」
ヴェガはぴく、と肩を動かす。そして、顔を上げた。
どうやら、巻き終わったらしい。ヴェガは立ち上がり、布と黒い液体の入った瓶をデスクに置く。
「あ、ありがとな――」
そうクロスが言いかけた。
その時、ヴェガの目つきが鋭く、冷たく獣の様だということに気付いた。
そして、クロスは壁に押し付けられる。
「なっ――!」
「貴方もお嬢様と同じように――」
ヴェガは怪しく微笑みながら、優しく語りかける。
「それ以上に優しくしてあげましょうか?」
沈黙が続く。ヴェガはよく分からない瞳でクロスを見つめ続けた。
「冗談ですよ、私も貴方に対して乱雑にしすぎましたね」
まるで、シェーラに話す様なとげのない口調で言う。
やはり、こいつは俺のことが嫌いなんだな。クロスはヴェガの顔を黙って見つめた。
「なんです? ああ……分かりましたよ。貴方に対しても今まで以上には優しくします」
ヴェガは半分諦めた様な口調で言った。
そうしていると、いきなりドアが開き一人の小柄な少女が中に入ってきた。
一応この作品は、男女の純愛をテーマとしています。
間違った方向には進みませんよ!?
……たぶん。




