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「お…じょう…おじょう…さま…お嬢様…お嬢様!」
「うううん…まだ寝かせて…」
「お嬢様、もうお昼ですよ。もう起きた方がいいと思います」
「アン?」
「はい、お嬢様、アンです」
「………帰ってきたのですね……」
「寝ぼけてないで起きて下さい。今日は新たにお嬢様にお使えする者を呼んでます。もうそろそろ起きて会ってください」
「新しいメイド?」
「そうですよ!なんでもお嬢様がお連れしたと聞きましたが…」
わたくしはハッとし慌てて着替えました。
そうして、アンは2人部屋に招き入れました。
「お嬢様、新たにお嬢様付きになったメイドです」
「宜しくね。名前を聞いてもいいかしら?」
「はい!お嬢様、私はアヤと申します!これから宜しくお願い致します」アヤは元気に返事をした。
「初めまして、わたくしはエンと申します。アイリーン様にお使えする事ができ心より感謝しております。この命、貴女様のものでございます。何でもお申し下さい!必ずや力になります!」
重い…重いわ…。
「えっと、分からない事があれば、専属侍女のアンに聞いて下さいね。ここでは、アンの言う事をしっかり聞く様に」
2人は頷き、アンは目を潤ませわたくしを見つめる。
アン?
アンは手を叩き、わたくしに頭を下げ2人を連れて出て行った。
そして、月日は流れ…朝からわたくしはメイド達に叩き起こされ、磨かれ純白なドレスを着せられ、メイクに髪のセットをされ、押し込められる様に馬車に入れられた。
その瞬間、わたくしは今日が何の日かを悟った。
そう…この日は…婚約者発表の日だ。
なんで!わたくしはこんな大事な事を忘れていたんでしょうか!!!
通りで朝起こしに来たアヤがニヤニヤしてたはずだわ!
何故教えてくれなかったの!アヤ!!!
あああ…過去のわたくしを殴りたい。
いやーーーーー!!!
そんなわたくしの気持ちも虚しく、城に付き、あれよあれよとその時を迎えたのだった。