護衛騎士の心
お嬢と別れて俺はただ歩く。
その前にはお嬢と似た男が歩いていた。
この男との出会いで俺は自分の人生が変わった。
あの時、手を差し伸べてくれた。
俺を暗闇から光へと連れ出してくれた。
剣を鍛えてもらえて、常識を教えてもらえて、こんな俺を信用してもらえて、預けてくれた。自分の大切な娘を…
なのに俺は、お嬢を危険に晒した。
でも、1番、俺の心を蝕んでいたのは
お嬢に自分の命を奪えと…言ってしまった事だった。
あの時のお嬢の顔が忘れられねぇ。
「おい、その顔どうにかしろ」
「申し訳ございません」
「はぁ…その口調もやめろ、ここは誰も見てない。いつもの様に話せ」
「何故、俺をまだお嬢様につける?」
「必要だからだ」
「貴方様の大切な人を奪われる所だった!!
己の失態で!!あの時、構わず転移させとけば良かったんだ!なのに、俺は判断を誤った!そんな奴は護衛騎士失格だ!なのに、なんで外さない!」
「ん?聞こえなかったかな?必要だからだ」
「理由を教えてくれ!」
「ザック、君は何を1番悔いている?俺の娘を守れなかった事か?命を奪われる事にか?それとも、己の失態か?
俺には違う様に見えてしまっている。お前は、自分を殺す様に言った事を1番悔やんでいるんだろ?」
「分かってるなら外せ、護衛対象に言ったらいけねぇ事だった。当主様とお嬢様は違う事にあの瞬間まで気が付かなかった」
「ああ…きっと俺だったなら、傷ついたとしても君の覚悟を取って魔法を放ったかもな」
「……ッ」
「はぁ…そもそも俺ならば魔法は使わない。剣をとりお前を助ける為に怪物を斬る」
俺は視線を外し下を向いた。
そう、俺は1番失念してはいけない事をしていたんだ。
お嬢は……女だって事に……。
いくら、魔力が強くても、その力は訓練している女より劣ると言う事に…
だから、剣を取れとは言えなかった。
あの瞬間気付いちまった。
震えてるあの方は女で10歳の少女だと言う事に。
しかも、俺を殺せと言った後にだ…。
「お前が自分を責める気持ちも分かる。あの子は10歳には見えん程考え方が大人びている。
趣味は……ゴホン!!それ以外は、ずば抜けている。
魔力も、知識も、行動力も…」
「それでも、大人と一緒のように扱ったら駄目だった」
「そうだな。そこはお前が駄目な所だ。でもそれよりも1番の功績をあげたじゃないか」
当主様が何を言ってるのか分からねぇ。
「お前が生きていると言う事だ」