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ありったけの回復薬を2人にかけ、飲ませる。
虚な瞳がわたくしを捉えて離さない。
「ゴボッ…アイリーン様…もし…この命が助かった…な…ら…貴女様に…お仕えしても宜しい…で…しょ…う…か…」
「ええ…勿論ですわ…約束ですよ…必ずわたくしの侍女になって、わたくしを支えて下さいませ」
「あ…り…がとう…ご…ゴボッ…ざ…い…ま…す」
2人は、そのまま、【 】を失った。
涙を流しその場から動かないわたくしを、ジル殿下はそっと抱きしめた。
「アイリーン…」
「あんな、作戦、エンカ様にさせては駄目だったんですよ。なのに、わたくしは……」
「君は悪くないよ。アイリーン…君は最後まで反対していたじゃないか。でも、やると言ったのはあの2人だよ。その覚悟を君が軽んじてはいけない」
涙で濡れた視界。
分かっていますわ。彼女が選んだんですもの。
でも、それでも、それでも、わたくしは…。
「ジル!今良いか?」
アラン様の緊迫した声に、わたくしは、そっとジル殿下の胸を押す。
「もう大丈夫ですわ!ありがとうございます。アラン様わたくしも聞いても大丈夫な話でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。これを見て欲しいんだ」
そう言ってアラン様が手を広げた。その手に持っていた物は…。
「コレは…」
「おいおい、マジかよ」
「レオン、冗談ではない」
アラン様の手の上に乗っていた物…それは…一つの花だった。白い花弁に所々に金色が混ざるその花は…
魔物を生み出す花と言われている
国が栽培を禁止した花だったのだ。
花が突然赤色に染まって行く。黒い何かが溢れ出てきて…
「マズイ!!!!レオン!アラン!ザック!!くるぞ!」
ジル殿下がそう言い剣を構えた。