表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/77

第74話 手早く、ホットドックを

 文官の独身寮に通うようになり、三日目のことだった。


 ルチャルは貯蔵庫を確認していると、天井から吊り下げられていた食材を見て少し驚く。この国では、調理されているのは知っていてもどこで仕込んでいるかわからなかったからだ。



「サナさ~ん。これ使いましょう」



 シュスイといっしょに持ってきたのは、『腸詰』。要はウィンナーである。



「あんら、それもパンに使えるのかい?」

「美味しいですよ~。ホットドック」

「ホットドック??」

「師に教わったんですが、腸詰を挟んだパンのことを言うんです」

「面白い名前だねぇ?」



 謂れはともかく、相性は抜群。試しに、腸詰をひとつ焼いてから食べてみると……中から肉汁があふれんばかりに出てきたため、期待のできる仕上がりになっていた。



「まず、コッペパンという白パンを作っていきます」



 形は棒状にするけれど、途中途中適度にガス抜きしながら成形していくのは少し慣れが必要。


 丸パンのように、ころころ転がすだけだと膨らみ過ぎて切り込みを入れるのが大変になる。


 ルチャルが養育機関に入りたての頃は、半ば生地で遊ぶように作ってしまったのは苦い思い出だ。



「そんな風に作っていくんだねぇ?」

「焼いていく表面をぱりっと仕上げるのにも、大事なポイントです」

「……なるほどねぇ?」



 サナも挑戦はしてみたが、最後に〆る箇所がうまくいかずに表面が荒くなってしまった。そこをルチャルが修正しながら何度も作っていく。


 次第に形がマシになっても、まだまだだ。彼女への指導は始まったばかりなのだから。



「シュスイ、変換(チェンジ)!」

『あいな~。オーブン!』



 焼成の段階にまでいったら、シュスイのオーブンでこんがり焼き。


 軽く冷めたあとに、サナには試食してもらう。味わいは、普通の白パンと同じだけれど。


 ここに、焼いたウィンナーを切り込みに挟んで、無限収納棚に入れておいた『ケチャップ』と合わせれば。


 簡単『ホットドック』の出来上がりだ。



「これがホットドックです」

「この赤いのは?」

「ケチャップという調味料なんです。トマトをベースに、香辛料をたくさん使っています」

「へぇ?」



 どれどれ、とひと口かじってくれたら。その表情がどんどんキラキラしたものになっていく。


 『シンプルイズベスト』。


 祖の言葉らしいが、シンプルなものを合わせたことで、うまくいったり美味しいものが出来上がることらしい。


 ルチャルは、職人になる中でその言葉の意味を理解しようとしたときはわからなかったが。師と祖が振舞ってくれたシンプルなパンを平らげたときには、その意味を理解することが出来た。


 今の、サナが感動してくれているように。



「どうです?」

「うんまい!! 腸詰の油をうまいこと吸ってくれるパンもだけど、このソースもいいね!! さっぱりしているのに味わいが深いよ!!」



 ひとつをぺろりと平らげた時の笑顔に、ルチャルはにこにこが止まらない。何故なら、このパンの匂いに釣られて、また『彼ら』が入り口にこそこそと隠れているのを気づいていたからだ。



「みなさ~ん。ご飯の前に、軽くいかがです~?」

『えっ!?』

「……あんたら、またかい」



 サナが呆れるくらい、若い文官らの食欲は本能に忠実。


 廊下にウィンナーの匂いが漂ったので、引き寄せられるのも仕方がないだろう。


 なので、サナの許可を得てから彼らに食べてもらうと、全員おかわりを頼むくらい夢中になったのだった。

次回は木曜日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ