第73話 稽古以外に依頼をこなす
ザイルは、あれからもやもやしつつも騎士らへの指導をシュートらに頼まれていたが。
とある日に、ライオスから、ひとつ、頼み事を持ち込まれた。
「オークの巣を一掃?」
「……ああ。Bランクの冒険者を中心に討伐依頼は出しているんだが、なかなか駆逐にまで至らないらしい」
そのランクの冒険者たちで手こずるということは、巣の中に『キング』と『クイーン』がいるということ。
繫殖力がすさまじく、いくら屠っても増えるだけでしかないのだろう。
であれば、素早く奴らに到達し、一掃しないと終わりが見えてこない。
そのために、わざわざSSランクをあてがうということは……ほかの冒険者たちに『お披露目』するということだ。
普段のザイルなら面倒だと思うところだが……色々鬱憤も溜まっていたし、オークの肉は食用に出来るため、ルチャルへの手土産になるのではと張り切る気持ちが湧いてきた。
「わーった。引き受ける」
「魔法鳥は飛ばしておく。……好きなタイミングで向かってくれ。単独がいいのだろう?」
「場所は?」
「関所に近い山中だ。巣穴はかなりでかいらしいが」
「ん。準備したらすぐに向かうぜ」
山中。
その中の巣穴。
とくれば、ルチャルと短い旅をしていた途中にあったかもしれない。
それが城下町にまで侵略してくれば、一大事どころですまないだろう。ザイルは装備一式を見につけ、すぐに部屋から飛び出した。
ワイバーンなどを使えば、ひとっ飛びで関所には向かうことが出来るだろうが。ザイルの脚力を考えれば、その必要はない。半分本気を出せば、視認できない範囲外のスピードを出せるからだ。
(……キングとクイーンを討伐したら、そっちの肉を持ち帰るか?)
走りながら手土産を考える余裕。
試験に合格したばかりとは言え、ザイルの冒険者稼業はそれなりにキャリアを積んでいる。スタンビートに近い現象であれど、SSランクの名にふさわしい実績はいくつか残してきたのだ。ルチャルの師でもある、マックス=ユーシェンシーには当然劣ってもザイルとて立派な冒険者として過ごしてきた。
ルチャルに、少しは認めて欲しいと思う気力もあったかもしれないが。
惚れた相手に、ちょっとはいい恰好を見せたい気持ちが強かった。
たとえ、『ザイルなら楽勝でしょ?』と言われたとしても。
(あ~あ。そうだよな? ルチャルなら、俺には普通だと思うかもしれない)
SSランクを持つ者として、それは当然。
今までの努力の証として、出来ることと出来ないことくらいの区別はつく。彼女は相手を馬鹿にしたりしないが、力量を見極めるのは簡単に出来てしまうのだ。そこは、マックスが師であったから見についた技術だろう。
シュートらにも見せたが、あんな幼いのに、ザイルは勝てないのだから。
「かっこいいとこ? まあ、見せたいけど。それよりも、成果を見せた方が感心してくれることを願うぜ!! とっとと倒して、肉寄越せってんだ!!」
関所を越えたあたりで、一瞬止まって事情を説明してから再び駆けだした。シュートとかは今日はいなかったが、近衛騎士がそう何回も関所にいるはずがない。ライオスあたりに、今日の騎士らへの指導を頼まれた可能性が高い気がした。
山合いに出たあたりで、一度足を止め。足跡などの痕跡を頼りに巣穴を探したが……三個目の洞窟でヒットした。入口でぐったりしている冒険者の集まりがあったので、瞬時に現れたように見せてから責任者らしい男に冒険者カードを見せれば……がっくしと、肩を落とされた。
「……頼みます。キングとクイーンに手こずって」
「了解した。ここで休んでな」
背負っていた相棒の双剣を抜き、地面を蹴ってから中へ突入する。目を慣らすのに一度強くつむった直後、嫌な空気を感じたので薙ぎ払えば……絶叫と共に、倒れる音が耳に届いた。目を開ければ、地面にはオークの下っ端がざっくりと分割した状態で倒れている。
その音に気付いた、奥にいるらしい連中も突撃してきたがザイルの敵じゃない。旋風のように動いて薙ぎ払えば、死屍累々の山が出来ていくだけだ。途中、ほかの冒険者の死体も見えたが回収するのはあとだと、片隅に思うしか出来なかった。
次回は火曜日〜




