第71話 次の依頼を
ルチャルがフィンドへ次に依頼したのは、発酵に必要な機材だ。
冷蔵庫、冷凍庫を作っているのも、この国だと鍛冶の担当だとガイウスに教えてもらったので……手ごねから、そろそろ次の段階に必要な機材をどうにかしなくてはと思っていた。
シュスイの変換でなんとかしてきても、公国にずっといるわけではないルチャルなため。大量生産のパン作りのために、必要不可欠なものを用意するしかないのだ。ただし、構造の勉強はしていても、説明がうまくいくとは限らないが。
「……ドウコン?」
「正確には、『ドゥコンディショナー』という機械です」
「それが、パン作りに必要なのか?」
「大量に作っていくためには、欲しいんですよね」
名前も使用理由もピンとこないのは無理もない。
ルチャルも、師たちの下で修行しなければ縁もなかった機材でしかなかった。
異能として、その能力を契約精霊に与えることが出来るようになっても。現実的にその機材があるのは、セルディアスにしかないだろう。
だから、その機材を他国にも広めていきたかった。
シュスイに変換してもらい、フィンドにはどんなものなのかをまず見てもらうところから始めた。
「箱型なのは、冷蔵庫とかと似ているな?」
「でも、中の構造は全然違います」
扉を開ければ、中身は天板を差し込むストッカーがあるだけ。網板もあるが、別の用途の関係上入れてあるだけだ。
「発酵っつーと、この中でパンを熟成させるのか?」
「そうですね。生地を寝かせつつ、酵母を活性化させるための場所です」
「普通に外で寝かせてたら、時間がかかり過ぎる。それを補う装置ってとこか?」
「そうですね。スキルと組み合わせたら、時間を短縮できますが」
そこまでは、まだセルディアスでも再現が難しいと、日夜研究されているくらい。フィンドの理解力が高くても、それを実現化するのは困難だと頷いていた。
ルチャルも扱える、時間短縮。あれを機材に組み込むのは、負荷が大き過ぎて故障の原因になるからと……なかなか難しい課題となっているのだ。
「なるほどな? 試作はいくらでも出来るが。あの白パンたちを毎日のように食えるようにするには、その機材がほしいってとこか?」
「他国でも広めていきたいですし。基礎があっても、大量生産は大変ですから」
「ほーん。嬢ちゃんの技術を惜しみなく、か? 面白いな。作らせてもらうぜ」
「ありがとうございます」
シュスイのドウコンをしばらく観察してもらいながら、フィンドは必要なメモを取り。
ある程度納得してから、作業に取り掛かってくれるようだ。是非とも、差し入れのパンかなにかを作ってあげたいとルチャルは決めた。
一日二日で作れるものではないだろうから、次の依頼を受けるのにそのまま新しい場所へと足を向ける。
騎士寮から少し奥に入った、文官の独身寮。
ガイウスから、彼らにもパン作りの指導などをしてもらえないか頼まれたのだ。
「あんたが、公主のおっしゃっていた職人ちゃんね?」
「よろしくお願いします」
料理長は女性で、サナという少しふくよかだが優しい印象を持てる人物だった。
次回は木曜日〜




