第61話 快癒したので、特別メニューを
ザイルの看病は、なんと一日で終わってしまった。
それくらい、回復力が常人とは違うのだろう。
翌朝の、ルチャルが仕込みを終えてから覗いてみたら、もう起き上がっていたのだから。
「あんがとよ、ルチャル。もう、すっかりよくなったぜ!」
元気いっぱいと言える笑顔を見れてほっとは出来たが、まだ今日一日は大人しくするように言った代わりに、特別メニューを作ってあげようとザイルにも食堂へ来てもらった。
「カレー? ハヤシ? ドリア? どれが食べたい?」
実は、米の備蓄が飼料としてあることが最近わかり。ガイウスにも許可をもらって、精米してから食堂では大人気の主食のひとつとなったのだ。
おにぎりもだが、カレーには非常に合う食材として、騎士もだが鍛冶部門の方でも取り扱ってくれているのである。
だが、今日は。ザイルの快癒祝いとして、これまで振舞ってきた料理をもう一度作ってやりたかったのだ。
「マジ? どれでもいいのか?」
「時間も限られているから、一個だけだよ?」
「んじゃあ……ドリアがいいな?」
「おーけーおーけー。それなら、シチューもあるし。シチュードリアにしてあげようか」
「あんがと!」
米をシュスイが変換した炊飯器で短縮して炊き上げ。
作り置きのビーフシチューをかけ、チーズとパン粉を被せて窯で焼き上げる。
出来上がったら、浮遊魔法で落とさないように気を付けながらザイルのとこまで運んであげた。ルチャルの身長では卓にそのまま置けないからだ。
「はい。召し上がれ」
「いただきます! ……あっち。うっま!! やっぱ、これ美味い!!」
「誰も取らないから、ゆっくりお食べ~?」
「おう」
旅路のときは、適当に余った食材同士で作っただけだが。今回も似たように作ったのに、ザイルは『美味い美味い』と言いながら、元気な笑顔で食べ続けてくれていた。
寝込んでいたときはそれなりに驚いたが、やはり、元気な姿を見られるのが一番安心したルチャルは……せっかくだからと、厨房の材料を見て失敬しても良さげな材料で『あるパン』を作ってあげた。
「はい、これもどーぞ」
「お? カレーパンじゃん! しかも、出来立て?」
「昨日のパン粥だけだと、物足りなかったでしょ? たくさん食べるのが君なんだし」
「……バレた?」
「果物だけでも、まだ足りないって顔してたしね?」
発酵には時間短縮を軽く使っただけなので、生地は自分の無限収納棚から取り出したのを使ったまで。
野営では大量に仕込んだのをいっぺんに使い切れないから、普段は収納棚に入れてあるのだ。あとの材料は、厨房から拝借したものだが。
「おや、ザイルさん。もう大丈夫なんですか?」
マルシスやシャルルが出勤する時間になっていたのか、まだ食べ続けていたザイルを見てほっとしていた。どうやら、騎士寮全体にザイルの体調不良は伝わっていたらしい。
「おう。心配かけて悪かった。ルチャルたちのおかげですっかりよくなったぜ」
「そうですか。……器のはなにを?」
「ドリアという、米を使った窯料理ですよ~」
「……シチューとチーズの匂いはしますが。二つを合わせて?」
「米の上にシチューをかけて、チーズとパン粉を乗せて焼いたんです」
「美味かったぜ!!」
「カレーでも出来るんですよ」
「今度それ食いたい!!」
「はいはい。もう今日はお終いだから、部屋で寝てきなよ」
「……へーい」
特別メニューはここまで。
昼頃などは、普通に食堂のメニューで腹を満たすので問題ないだろう。
そう告げてから、ルチャルは鍛冶部門の方へと向かうことにした。
次回は火曜日〜




