第60話 幼馴染みらの安堵
「んで、ルチャルが看病してくれてるんだ」
「……そうか。彼女がわざわざ申し出てくれたのなら、その好意には甘えよう」
シュートとガイウス。
同じ年頃の、身分差は大きいが幼馴染みの彼らも……それなりに、ザイルのことを心配していたが。
彼の想い人になった、幼い職人がわざわざ看病してくれているのなら……今は、邪魔になるだろうと見舞いに行くのをやめにした。
ガイウスはシュートから聞いて大層驚いたものの、ルチャルが献身的な看病をしてくれるのなら問題ないと安堵したくらいだ。
「……デレデレになるか?」
シュートがザイルの様子をそのように喩えたが、完全にふたりきりではないので違うだろうとガイウスは首を横に振る。
「シュスイがいるから、それはないだろう」
「まあ、契約精霊と言っても……扱いは同等だしな?」
「彼女たちがいるんだ。風邪もすぐによくなるだろうな」
「滅多に引かない風邪、か。流行風邪ではないよな?」
「そうだな。私も気を付けなくては」
公主が公休日以外で休むことを基本的に良くないと思っているため、体調管理には人一倍気を遣っている。しかし、気を付けていてもなるものはなるのだ。今回のザイルのように。
「しかし、食い意地張ってるあいつが食えるもん……ルチャルは何を用意したんだろうな?」
「基本的に、我々に馴染み深いのはスープだからな。それをひと月で色々教えてくれたんだ。……よっぽどの、特別メニューかもしれない」
「……食いたくなるな?」
「食堂に行ってみるか?」
いるかどうかはともかく、マルシスらが見ているはずだから作り方を教わっているのかもしれない。
事実その通りで、彼らのまかないで『パン粥』というものを作っていた。
「ライ麦パンよりも、テーブルパンでつくるとより一層とろとろした仕上がりになるんです」
「たしかに、これは」
「……美味いな?」
小腹が空いていたので、ガイウスらも試しに食べてみたが。ふんわりしていたパンをちぎって、惜しみもなくスープに溶かすくらいに浸しておく料理。
これをシチューにも加えると、さらに深みが増して美味しいものになるのを、今マルシスらが試行錯誤している最中だとか。
「ザイルのために、わざわざ師直伝を振舞うとは……」
「案外……いや、彼女のことだ。病人を気遣ってのアイデアかもしれない」
「ルチャルだかんなぁ?」
生真面目なのはレシピを伝えるとき。その頑なさは、職人だからこそ。
以外は、ユーモアのある性格で子どもらしさがあまり見受けられない。
そんな彼女の、初恋の相手がザイルになれば……それはそれで、新たな進歩にも繋がるかもしれないが。あくまで、病人のために今回のレシピを引き出したまで、と言われてもなんら不思議ではない。
ガイウスは、ザイルの幼馴染みとしては複雑な気持ちになった。
(ザイルは完全に自覚しているからな? 弱っている今は、素直に甘えているだろうが……)
弱っている分、下手に甘えたなとこでルチャルを困惑させてしまうのではないか。
それは心配になったが、シュスイもいるから大丈夫だろうと思うことにしておいた。
でないと、ザイル自身の気持ちも報われない気がしたからだ。
次回は土曜日〜




