第57話 意外な人物が風邪に
鍛冶部門の寮に行くようになってから、とんと見かけない人物のことが気になってきた。
「……ザイル、見かけないですね?」
食事は騎士団の方を使っているルチャルなので、ふいに気になったことを告げたのだが。
シュートらも、事情を知らないのか『そう言えば?』と顔を見合わせていた。どうやら、サボっているのかなにかで部屋から出てきていないのかもしれない。
と、ルチャルは思っていたのだが。
「人一倍、食に貪欲な彼が食堂に来ないのは珍しいですねぇ? ええ」
フェルナンがそういうのだから、食堂に来ないのはおかしいようだ。たしかに、訓練の方はサボっていても食事を摂らないのはルチャルでも不思議以上に……不安になってきた。
なので、シュートと共に、彼が借りている部屋に向かったのだが。
「おいおいおい」
先に中へ入った感じだと、ルチャルのような爆睡とかではないような雰囲気だった。
「どうしましたー?」
「風邪だ。しかも、厄介な」
中に入っても良い感じだったので、そーっとシュスイといっしょに入れば……息切れ共に、篭もった空気の熱さを感じた。
シュートの後ろから覗き込んでみれば、横になっているザイルの容態は悪いものだとすぐにわかるくらい……顔全体が赤かった。
「ありゃ。起き上がれないですね、これは」
「おまけに。水も食べ物もろくに食ってねぇな? 魔法鳥も使えないくらいに弱っていやがる」
「……看病、しましょうか?」
「お前さんがか? 向こうの方はいいのか?」
「基礎練習くらいの指導は済んでいるので。事情をお話すれば大丈夫ですよ。病人を放っておくのがよくないですし」
「悪い。俺らも手ぇ離せないしな?」
「いえいえ」
ミュヘンらに魔法鳥を飛ばして事情を伝え。
シュートと食堂に戻ってから、マルシスらにまかないに使うパンはないかと聞いてみた。
「いくつかありますけど。病人用にだとシチューの方が」
「パン粥にしちゃうんです」
「……パンを粥に??」
「作り方はそこまで難しくないですよ~?」
ザイルの好みだと牛乳ベースのシチューよりは、出汁を変えたものがいいかもしれないと思って。
無限収納棚から取り出した、『コンソメ』を使ってまずはベースになるスープを作っていく。野菜はシンプルに玉ねぎのみ。フライパンでじっくり炒めてから投入し、味を軽く整えたら…パンをちぎっては入れていく。
沈んで、少しとろとろになったらパン粥の完成だ。
「……美味しそうですね?」
「師直伝の、風邪のときのメニューです」
「……まかないで作ってみてもいいですか?」
「どうぞどうぞ~。コンソメは少し難しいですが」
「シチューでも出来ますか?」
「出来ますよ~」
そんなやり取りをしたあとに、鍋ごと無限収納棚に入れてからザイルの部屋に向かう。
ノックをしてもまだ辛いのかで、返事はない。
シュスイが扉を開けても、苦しいのかでまだ息切れが止まらないようだ。ルチャルは、食事もだがもう少し環境を整えてあげようと、少し窓を開けて換気をしてみた。
『身体を拭くのはわっちがしようか?』
「そうだね。あたしは食事が出来るように、調度品動かすよ」
手分けをしてザイルが起き上りやすいようにしてあげると、気が付いたのかでザイルの目がぼんやりとだが開いたのだった。
次回は土曜日〜




