第56話 青年の弟子②と中年の弟子①の壱
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ハルクとゾードは次に向かう国を地図とにらめっこしながら決めようとしていた。
ひとつ目の国は、レシピの改革がそれなりに進んでいたため、ひと月程度で基盤が整ったために出立が早かっただけだが。
「ゼストリアは遠いしな? ソーウェンは既に向かっているって聞いたし、どこにするか」
「ホムラもニンリーが行っているしね? さらに先の先に行くのも悪くない」
「だな?」
【枯渇の悪食】の影響で、潰えたと思われているレシピの復活。
祖と師が何千も復活させたと弟子らには伝わっているが、それでもまだまだ完璧とは言い難い。
国と地域。
その差でどれほどのレシピが潰えたのかは、かつての天災が関係していると世間では言われているものの。
実際は、セルディアスを中心にした大きな厄災が降り注いだことが原因だ。その真実を知る者は弟子の中でもごくわずか。
三世代目でも、使者に選ばれた者らしか知り得ない。
「海目指すか?」
「山に近かったからな? それもいいかもしれない」
「俺、ガキの頃しか海知らないんだよな?」
「セルディアスの海はかなり遠かったしね」
行きたい場所。
知らない場所。
それを知るのも、使者の務めのひとつでもある。
悪いことではない。無知をそのままにしておくのも、使者関係なく人としてよくないことだから。
『海に行くんす?』
『海、海~~』
ふたりの契約精霊らも、興味があるらしいので行先をまず海辺にしようというのは決定。
国の候補はいくつか。
パンを含め、レシピの復活具合はどの程度か。
気になることは多いが、まず目指す位置は決まった。
同時に、結界の向こう側では魔物らが興奮状態でこちらに向かって突進しようとしている。
「面倒だなぁ?」
「まあ、食材だと思えばいいんじゃ?」
「そうだけどよ? 鹿は脂身少ねぇんだよな!」
「そんな問題か? 赤身も美味いのに」
「鉄分多いけど。不味くはないが、カレーとか焼き肉向きだろ~?」
結界を解けば、突進してくる魔鹿の群れ。
ハルクはさらに大きな結界魔法で包囲し、ゾードはその中で自分らが怪我しない範囲内での攻撃魔法を展開させていく。
当然、そんな予想をしていなかった魔物の群れはすぐに貫かれて、命を閉じた。
倒れていく魔鹿らは、自分たちの愚かな突進をしなければ……という考えは短絡思考だけでは思いつかなかっただろう。知能が低い生物では、人間のように理性と知性を兼ね備えた側には敵うまい。
「大量だな? 無駄にしないためにも解体するか?」
「収納棚に入れて、村かどっかで買い取りしてもらうのかよ?」
「金の使い道はいくらあっても問題ない。次の国までの繋ぎにする分はほしいからな?」
「まあな~」
資金は機関から必要最小限しか手渡されていないため、旅の練習も兼ねて使者へ渡されてのは紹介状以外は思ったより少なかった。
ハルクは慣れていないゾードは最初こそ不満を覚えていたが、前回の国でも道すがらでも資金を得る方法を覚えたため……今は、そこまで文句は言わない。
海へ向かう途中、肉は価値の高い食材として扱ってもらえるだろうからと信じて。契約精霊らと四人がかりで解体を終えてからは、腹ごしらえも兼ねてカレーを仕込むのだった。
次回は木曜日〜




