第51話 豪快に眠りこけて
たまにゆっくりすることになった、ルチャルの公休日。
とにかく、体力を回復するのに眠って眠って……眠りまくったその日は。
気が付いたら、翌日の夕方まで寝扱けていた。
口はもぐもぐしていたので、シュスイがまた適当にパンを押し込んでくれたのだろう。
「……ぐっすり、寝てた?」
『そりゃもう? ほとんど寝ぼけていなかったさね?』
「……いいこと?」
『少しは、成長したかもしれないねぇ?』
寝起きのクリームパンは美味しかったが。朝昼の食事もまともに摂らずに、寝扱けるとは少々よろしくない。
着替えてから食堂に行けば、マルシスたちが夕飯の準備を終えていたのかでほかの料理人たちがテーブルを拭いたりしていた。
「あ、ルチャルさん!!」
「こんにちは。さっきまで寝てたので」
「え? 風邪とかですか??」
「いえいえ。ただ寝てただけです」
「それならいいんですが。料理長~、ルチャルさんいらっしゃいましたー」
「おーぅ」
シュスイの分も用意してもらい、ふたりで早めの夕食を食べることになった。
ルチャルはお代わりしてもいいからと、マルシスに言われたのでそこは遠慮しない。燃費の悪い体質には、大量のご飯が必要だから。
「おや、ルチャルさん。少しぶりですね?」
ある程度食べていたところで、副団長のフェルナンがやってきた。まったく会わないわけではなかったが、彼ひとりと出くわすのは珍しかった。
「今日はお休みもらっていたので」
「それにしては、朝も昼もここに来ませんでしたね?」
「……寝てただけです」
「それだけ、お疲れのようですと。もう少しお休みの日程は増やした方がいいのでは?」
『ルチャルは燃費の悪い体質なだけさね? 寝起きも悪いし』
「……シュスイ~」
『事実でしょ~』
「寝起きが悪い? 可愛らしいことですね」
「いえ。ちょっとどころじゃないくらいに酷いんです……」
「そうなんですか?」
フェルナンも向かいに座って食事を始めたが、騎士ということもあって所作が綺麗だ。もしかしたら、貴族とかの一員かもしれない。
「ん~~。焼き加減はまずまず」
バターロールをひと口食べてみたが。発酵と焼き加減を比較してみると、まだ食事には出せる仕上がりだと判断。
奥の方でその言葉を待っていたのか、マルシスらが息を吐く音が聞こえてきた。
「さすがは職人ですね。ひと口で詳細までわかるとは」
「でなければ、その職業を名乗れませんから」
「僕には充分美味しく感じますが、まだまだですか」
「あたしのも、師や祖には劣りますよ~? おふたりのは、とんでもなく美味しいんです」
「……孫弟子にそこまで言われるくらい、ですか」
「一応、筆頭を名乗らせてもらっていても、まだまだ修行中ですよ~」
もっと幼い頃に食べた、師であるリーシャのサンドイッチでそう思ったくらいだ。弟子たちとの茶会で振舞ってくれた、あのやわらかくてしっとりしたパンの味は今でも忘れていない。
それを再現するのはとても難しい。一定のレベルにまでは到達していても、失われたレシピの一部を元通りにしたに過ぎないのだ。その功績があれど、邁進していないルチャルの指導は孫弟子の中でもかなり厳しいものだと言われていた。
そんなつもりはないのだが、妥協していないだけだと思っているのに。
子どもだからと、侮れないように指示を出しているだけだ。決して、自分の技術を誇張しているからではなかった。
次回は土曜日〜




