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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第50話 幼馴染み同士で心配している

 シュートは、その日たまたまガイウスの執務室にひとりで訪れていた。


 近侍らもおらず、本当に公主の彼ひとり。


 黙々と仕事をこなし、そろそろ茶の時間だと自分で淹れようとしていたため、そこはシュートが代わりにやると言い出した。


 公国の主とは言え、自分で出来ることは可能な限りする姿勢は微笑ましいものだが。目の前に部下がいるというのに、そこは関係ないと思うのか。少し、苦笑いしてしまうが、提案してくれば大人しく座っていてくれるので、素直だなと感じる。


 あとは、この幼馴染でもある主に、それなりに釣り合う女性さえいればいいのだが……見合いをしても、気に入る相手が出来ないのが厄介だった。



「ほら、茶」

「……ああ。ありがとう」



 せっかくなので、シュートの分も淹れたが。座って飲むのもなんだと立ったままでいた。椅子がないわけではないのだが、そこまで長居する予定がないつもりなのである。



「……ルチャルが来て、ひと月程度か」

「今日は休みにしているが。……しっかり休んでいるのか?」

「シュスイの話聞くと、寝るときは相当寝るらしいぞ? 昼も食わずに半日くらい寝るそうだ」

「そこは……年相応の子どもか?」

「だろうな?」



 たった十歳程度の幼子に、使命を託すセルディアス王国もそうだが。彼女の能力は大人の倍近くと言っていいくらい、役に立つ以上の成果を見せてくれている。


 騎士寮の料理長たちも、こんな幼い料理人が自分たち以上の強者だというのは……最初、かなり疑っていたらしいが。今では師と思うくらいに頼りにしているそうだ。


 そして、ルチャルの料理の魅力に惹かれ……日夜、パン作りにも励んでいる。今日のまかないもまた、訓練途中で作ったものだがまだ食べれる味だなと納得できる仕上がりだった。



「……しかし。ザイルは動かんな?」

「……ガチで、初恋とくりゃ……なぁ?」



 だがしかし、今思い出したことがあった。


 ふたりのもうひとりの幼馴染で、今訓練場で指南役を任せているザイルのことだ。


 彼がルチャルと国境で遭遇しなければ、ふたりは出会うことはなかった。気の合う友人のような旅路をしていただけだろうに、ルチャルの作るパンの虜になったひとり。


 そしてそれ以上に、歳の差はそれなりにあるのに……ただの子どもとして見ていなかったことが、ガイウスらの前では判明していた。


 ちょっとした犯罪臭はするものの、成人して間もないザイルの初恋。


 その相手がルチャルだというのに、ザイルは認めたらしいが動けないでいる。何故なら、ルチャルには相手にされていないからだ。自身が子どもだからなのと、それなりにモテる顔立ちをしているザイルは範囲外とでも言わんばかりに対応しているから。


 そのため、鬱憤を晴らすついでに、シュートはライオスに頼んで彼を訓練場の指南役にさせたのだ。



「ルチャルは大人顔負けの機転の良さを持っているが……そこについては、やはり鈍感なのか」

「ガイウスがもしそうなら……捕まえるか?」

「そうだな。その気があるとしたら、セルディアスへも使者を送り。ご両親にも説得していただくとかは……するな?」

「……ザイルに、そんな頭あるか?」

「……変に、まっすぐなところがあるからな? 完全にバカではないが」

「あれでも一応、SSランク冒険者だが……」

「武と知力は大きな差があるだろう……」

「だよなあ……?」



 歳の差を一応気にしているのか、即告白しようとしないのはまだマシか。


 それでも、自分を見て欲しいというアピールとかはちゃんとしているらしい。エクシスあたりが見かけても『無理ですよ~』と言わんばかりの結果になってしまっているが。


 とにかく、幼馴染みが奇行に走らないように注意はしたいが……こじれ過ぎないように、一応は見守ろうと決めることにはした。茶を飲んでから、ガイウスも仕事が落ち着いているので訓練場に共に行ったが。



「「……おいおいおい」」



 八つ当たり稽古をしたわけではないだろうが、訓練生の死屍累々とやらが出来上がっているのに、ザイルは不満垂れた顔でいるのだった。


次回は木曜日〜

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