第45話 ゆっくり寝て寝て
しっかり、ぐっすり寝てどれくらいの時間が経ったのだろうか。
気が付いたら、ぼーっと身体を起こしてルチャルはあたりをきょろきょろと見回していた。
シュスイがいないのか、と思っていれば、鼻の近くにいい匂いがしてきた。おそらく、あらかしめ用意していたパンのひとつだろう。
迷わず、かぷっと食べるのだった。
『今回は大人しめだねぇ?』
コロッケパンだったので、両手で持って食べているとシュスイがそんなことを言い出した。食べながら話すのは行儀が悪いからと、ルチャルは半分くらい咀嚼したのを飲み込んでから聞くことにした。
「暴れてなかった?」
『おうさね。ぼーっと、してただけだよ。余程、疲れていたんだろう』
「ふーむ。指導とかで疲れたのなんて、修業中でもよくあったのに……」
『環境が違うんだ。緊張具合が違っても当然。それで、気が抜けたんだろうさ』
「なーるほど?」
シュスイからおかわりはいるかと聞かれたため、もうひとつと手を出した。次に出してもらったのは卵サラダのコッペパンだったので、お腹が多少満たされてからベッドを降りた。窓の外を見る限り、夕方に近い刻限。
ということは、夕飯に近い時刻だろうと、食べ過ぎてはいけない。マリウスたちの料理技術は格段に上がってきているので、指導係としても楽しみにしているのだ。
『食堂に行くかい?』
「うん、ご飯はちゃんと食べたいもん」
廊下へ出ると、誰もいない。騎士たちはまだ訓練かなにかで忙しくしているのでいないだけなのか。
シュスイと食堂への道を歩いていると、がやがやとした声が奥の方から聞こえてくる。というと、ほとんどの騎士が食堂へ向かっているのだろうか。
「あ! ルチャルちゃん!!」
先に声をかけようとしたが、エクシスがちょうど振り返ってくれたのであいさつをした。事情をシュートあたりから聞いていたのか、目の前に行くとぎゅっと抱きしめてくれたのだ。
「??」
「もう! しっかり休んだ?? お腹すいたでしょう!? 料理長たちの美味しいご飯お腹いっぱい食べましょう!!」
「あ、はい」
軽装の騎士服でもやわらかい女性の感触に驚いたが、それよりも心配をかけてしまったことに申し訳なさを感じた。それくらい、ルチャルは彼らの前では無茶をしていたらしい。
エクシスと手を繋いで順番が来るのを待っていると、配膳の料理人たちが『あ』と声を上げたのだ。
「ルチャルさん、起きられたんですね!」
「料理長!! たっぷり、用意してください!!」
「スープとパンだけでなく、肉と野菜も!!」
などと、待遇が厚過ぎるのではと思ったが……用意してもらったトレーには子どもでも食べられる量だが、種類が多い。
ここ半月で、パン以外の食事についても色々注意してきたおかげか。彼らも彼らなりに工夫をしてくれたのだろう。それについては、指導係としては嬉しく思えた。
「いっしょに食べましょ?」
「そうですね」
エクシスと向かい合わせで席に着き、食事へのあいさつをしてから食べ始めることにした。
休むことには、まだ少しだけ罪悪感はあるけれど。その分、しっかりと次への仕事ができるのならそれはそれでいい。
大人ではないし、まだまだ子どもの域を出てもいない。甘えるところは全力で甘えていいのだなと、他国に来てから学ぶとは思わなかった。
それもまた、職人関係なく、大切なことだとこの日から自覚したルチャルである。
ただし、寝起きについてはむらがあるのでシュスイに頑張ってもらうしかなかった。
次回は土曜日〜




