第44話 働き過ぎなので、休暇を言い渡される
「ルチャル、お前さん少しは休め!」
「はい?」
ゼストリア公国に滞在して、そろそろ半月が過ぎようとしていた。
ルチャルは今日もマリウスたちの指導に励んでいたのだが、途中で何故か近衛騎士団のシュートに指摘されたのだ。
あまりにも働き過ぎで、休暇を取っている様子がないことに。
言われてみれば、と、その場に居合わせたザイルも頷くくらいだった。
「そういや、なんだかんだで毎日食堂でなんか作っているな?」
「だろ? 公主様も気にされていたからな? つーわけで、ルチャル。引継ぎくらいは出来るだろ? ゆっくり部屋で休め!」
「えー? あたし、ふた月くらいはぶっつづけで動けますよ~?」
「「それ、よくない!!」」
事実、その行動力はセルディアス王国での基準だ。
修業に明け暮れる毎日を過ごしていたせいもあり。幼い身体でも体力は人の倍以上持っていると自負しているのだが、他人もとい、他国の人間にはそう見られていなかったのだろう。と言っても、休めと言われて簡単に休むことの出来ないのは職人の気質とも言うべきか……正直、出来ないことが多い。
使者となり、常日頃何かしらのパンのレシピを見直したりしているのだ。マリウスたちの指導もまだまだ始まって序盤なのだから、心配なのもある。
『作れる』のは問題ないのだが、それ以上に細やかな味の品質は安定していない。
使者として、一個人としてそれくらいはきちんと考えているのだ。子どもだからと、外見で舐められることもあるので、人一倍気遣いすることを忘れていない。
しかし、その逆に、休息を心配されるとしても、昼寝をしたら『寝起き最悪』の部分をシュスイに負担をかけてしまうのだ。それは非常によくない。
この中でそれを知っているのはザイルくらいだ。
だから、シュートにも知っておいてもらおうと口を開く。
「シュートさん、あたしにも欠点はあります」
「お、おう?」
「寝起きが非常に悪いんです。人に迷惑かけるくらい」
「……どんなだ?」
『条件反射で組手の技仕掛けるくらいさね』
「は?」
「あ~……俺も、そんなことされたな?」
「……ザイル。それはちゃんと言ってくれ」
「一、二回だけだったし、重要なことじゃねぇだろ?」
「今は違うだろ」
なので、簡単に休めと言われても気分転換なども思いつかない。ルチャルの休暇を考えるのであれば、自分自身としてはじっとしているよりも何かしらの助力になるために動く方が好きだ。考えて考えて、出した答えではあるのだが……ガイウスからも心配されるのであると、そこは従うしかない。
他国の人間であれ、一時的に仕える相手の言葉なので無視できないのだ。
「え~~? 思いっきりお昼寝とかしていいんですかぁ?」
「……したいのか?」
「ご迷惑でなければ、したいですけどぉ」
「……シュスイ。大丈夫か?」
『わっちが寝起きの対策してれば問題ないさね? そこは契約精霊の務めよ』
「…………なら、公主様のお言葉をお借りするなら。しっかり休息してくれ、使者殿」
「はーい」
そこから、マリウスたちには練習以外で生地を無駄にしないようにする注意点だけは伝え。
借りている寮の一室に戻り、着替えてからベッドへすぐに横になった。
休むことが任務だなんて、言われたのはいつ以来か。
もしかしたら、師や兄弟弟子らに注意されて以来かもしれない。
『ゆっくりおやすみ』
「うん。……おやすみなさい」
そして、秒というくらいの時間で寝てしまったのだから。意識がぼんやりしてきたルチャルはちゃんと休まなくてはいけないのをこの日から自覚したのだった。
次回は木曜日〜




