第41話 少女弟子①の弐
ニンリーは、コーダンと共に『異能』の全貌を調理人たちに見せることにした。
セルディアスでは『職人』らの大半が持つことを許され、師から与えられたそれは魔法以上の道具である『魔導具』に等しいものらが、彼らの目には映っているだろう。
契約精霊であるコーダンが、変換のたびに変わる姿を見せれば、驚きの声は誰も隠せないでいた。
「で、生地はこんな感じに!」
手ごねよちもはるかに早く出来上がった、『饅頭の皮』の量を見てまたさらに驚きの表情を隠せない。この少女は、本当にセルディアスでは認められた『職人』だと納得するくらいに。
「……素晴らしいな。あのような道具で、もうこんな立派な生地に」
厨房を任されている、厨師であるファーロンと呼ばれる男性はニンリーらの働きを見て正直な感想を告げてくれた。少女だからと、いくらか侮っていた気持ちがあったようだが。今までの流れをすべて見ていたことで、その考えを覆してくれたのだろう。
ニンリーにはなんとなくそう思えたので、にっ、と笑顔を見せてやった。
「祖はホムラで幼少期を過ごされた御方なんです。なので、饅頭には人一倍思い入れがあったと」
「そうか。君にもホムラの血が流れているが……元王女殿下にもそのようなことが」
「旅立つ前に、久しぶりにお会い出来ましたが。ホムラで饅頭をすべて披露しても構わないとおっしゃっていただいたんです。師の時代に復活した、饅頭のレシピたちを」
「……それは、有難い。是非、お願いできないだろうか?」
「となると、まずは扱う具材ですね」
と言って、選んだのは『豚肉』。しかも、脂身の少し多い肉だ。あとは玉ねぎに香辛料、シンプルな具材で最高に美味しい『豚まん』を作るためだ。
皇帝陛下に召し上がっていただいた角煮まんも、今後彼らには伝えていくが。まずは、得意分野の饅頭を披露したいと考えて。
「肉に……玉ねぎ?」
「あと、胡椒を使って少し甘味の強い餡に仕立てます。単純なものこそ、最も難しいと師はおっしゃっていました」
「……たしかに。個々の作り方で味の変化が出やすい」
肉餡を作り、生地に包んで形を整え……あとは、普通に蒸すだけ。
しっかりめの味付けにしたので、タレを必要としない饅頭。
角煮まんよりもさっぱりとした味わいになるが、肉と玉ねぎの甘味でいくらでも食べたくなる自信作だ。ニンリーはその豚まんにはこだわりを持っているし、祖にもお墨付きはちゃんといただいている。
蒸籠で火が通った豚まんは、小振りだったのが少し大人の手くらいまでの大きさに膨らんでいた。
ニンリーはその間に用意していた、専用の包み紙に豚まんを入れ、ファーロンに手渡した。
「どうぞ、かなり熱いので注意してください」
「……こんな食べ方が。…………う、まい」
「よかったです」
大口でかじりついてくれたので、すぐに肉餡に到達したのだろう。適度な脂と、肉と玉ねぎの甘味。そこに、塩胡椒でしっかり味付けした味わい。
それらを受け止める、皮の甘さも加わって相性抜群と言った味になった。慣れていないわけではないが、使者としての務めをひとつクリアできた喜びを持てたので、ニンリーは少し安心出来たのだ。
「これは、陛下も好まれる味わいだろうな。すぐにでも献上してさしあげたい」
「まだ序盤ですよ。これを、『皆さん』が作れるようにならなければ」
「! そうだな。たしかに、その通りだ」
なので、まずはファーロンがニンリーに手ごねでの生地づくりを再確認されながら……豚まんを一回調理してみたものの。不味いわけではないが、特別美味しいものではないと判明したため……生地作りから『やり直し』の指導が始まった。
ニンリーは少女だが、指導だけは『鬼』となるので年齢差など関係なく、これから厳しく教えることとなった。
次回は木曜日〜




